研究課題/領域番号 |
17K09849
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小宮 幸次 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50385077)
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研究分担者 |
綿田 裕孝 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60343480)
宮塚 健 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60622363)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / インスリン分泌 / オートファジー |
研究実績の概要 |
糖尿病はインスリンの絶対的あるいは相対的分泌不全による慢性の高血糖が様々な合併症を引き起こす代謝疾患である。我々はオートファジー(AP)機構が唯一のインスリン産生細胞であるβ細胞の恒常性維持に不可欠であることを明らかにしてきた。本研究ではβ細胞特異的かつ時期特異的にAP不全を誘導する遺伝子改変マウスを作製、その表現型を解析し、β細胞におけるAP恒常性がそれぞれの発生段階でどのような意味を持つのか明らかにする。 我々はMIP(mouse insulin promoter)-CreERTMマウスにfloxed Atg7マウスを交配し、β細胞特異的・誘導性Atg7欠損マウス(iβAtg7KOマウス)を作成した。6週齢のiβAtg7KOマウスおよび対照同胞マウスにタモキシフェン(TM) 6mgを隔日3回、合計18mg投与した。TM投与によりβ細胞特異的かつ誘導性にオートファジーが不全をきたしているかを確認するため、膵島を単離し、Western blottingを行った。TM投与2週後において、Atg7は80%程度低下し、APフラックスの一つの指標であるLC3 type1 からtype2への転換は抑制され、APの特異的基質であるp62の蓄積も確認された。以上の結果は、iβAtg7KOマウスではTM投与によりβ細胞特異的かつ時期誘導性にAP不全が誘導されることを示している。 iβAtg7KOマウスの代謝パラメータを解析した結果、2週間のAP不全では対象同胞マウスと同程度の糖代謝プロファイルを示したが、TM投与6週間経過すると、ブドウ糖負荷後の顕著な血糖上昇およびインスリン分泌能の低下を認めた。以上から、iβAtg7KOマウスでは短期のAP不全では耐糖能に全く差を認めないが、AP不全が長期化してはじめてインスリン分泌不全による耐糖能異常が顕在化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iβAtg7KOマウスおよび対象同胞マウスを繁殖させ、十分量の個体数を確保することに成功した。β細胞容量の変化、およびβ細胞増殖率の定量化に関しては今後再現性を確認し、統計解析を進める予定である。一方、当初計画していた単離膵島も用いたtranscriptome解析については、TM投与後2週間経過した、短期オートファジー不全モデルマウスiβAtg7KO [short] および、TM投与6週間経過した、長期オートファジー不全モデルマウスiβAtg7KO [long]それぞれから膵島を単離、RNAを精製し、RNA-sequencingを他施設に依頼している。
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今後の研究の推進方策 |
現在我々は、オートファジー不全とインスリン分泌不全をつなぐメカニズムを検討するために、前述のiβAtg7KOshortおよび、iβAtg7KO [long]マウスを用いて、単離膵島を用いた、RNA sequencingを行っている。この解析においてiβAtg7KO [long] マウスで発現が上昇しているmRNAはオートファジー不全とβ細胞不全とを繋ぐ鍵分子である可能性があると考えられる。 RNA sequencingで抽出された遺伝子について、iβAtg7KO [long]マウスでのin situ hybridizationもしくは免疫染色を用いて、発現変化を確認する。さらに同遺伝子がβ細胞機能に重要な役割をはたしている可能性を考え、β細胞株であるMIN6細胞において、同遺伝子をknock downし、その影響を検討する。 さらに、同遺伝子の成体における機能を解析するために、CRISPR/Cas9システムにより遺伝子改変マウスを作製し、我々が以前より扱っているMIP-CreERマウスと交配し、β細胞特異的に標的遺伝子を欠失させ、その表現型を解析する。これにより、in vivoにおける同遺伝子の影響を明らかにすることが可能となる。これらの解析により、これまで不明であったオートファジー不全とβ細胞機能不全を繋ぐメカニズムの一端が解明されることを期待する。
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