研究課題
インスリン分泌におけるピルビン酸シャトルからのNADH生成を含む代謝過程の役割を検討するために、ピルビン酸シャトルを構成する酵素の遺伝子発現を修飾するインスリン分泌MIN6細胞を作製している。まず、ドキシサイクリン誘導的に、isocitrate dehydrogenase 1, malic enzyme 3, pyruvate carboxylaseを過剰発現、あるいは、これらに対するshRNAを発現させることによる発現抑制を行った。Western blot法などで、発現修飾を確認し、インスリン分泌への影響を検討中である。また、発現修飾細胞のいくつかについて、細胞内カルシウムの動態の解析を行った。テトラスパニン分子群のインスリン分泌における役割を検討するため、構成分子の発現修飾を同様に行っている。また、発現修飾の他のタンパク分子への影響を検討するため、発現修飾細胞と対照細胞での細胞抽出タンパクを用いて2次元電気泳動による解析を行い、発現に影響がでるタンパクの候補を見出した。 テトラスパニン分子群とこれらのタンパクとの相互作用を解析中である。インスリン分泌応答に差が認められたグルコース代謝酵素の発現修飾細胞について、グルコース刺激時の細胞抽出液のメタボロームを解析し、異なる遺伝子の発現修飾細胞において、共通して変動する代謝経路を見出し、インスリン分泌の変化との因果関係を検討中である。インスリン分泌のセカンドメッセンジャーとして最も重要なATP以外にも、代謝シグナルを伝達する分子を示唆する結果を得ている。今後、シグナる分子の、グルコース刺激後の時間経過によるダイナミックな反応を解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変インスリン分泌細胞を複数作製することに成功し、順調に解析が進行している。一つの遺伝子については、適切なshRNAのターゲットを選択することができず、十分な発現抑制効果が得られていない。今後、Crispr/Cas9 systemを用いた発現修飾を行っていきたいと考えている。当初の予想に反し、一つの酵素の発現修飾だけでは、効果を認めない可能性が、想定されてきている。複数の遺伝子の発現修飾を同時に行う方法の導入も検討していく必要性が、生じている。
グルコース代謝酵素やテトラスパニン分子群の発現修飾細胞におけるインスリン分泌動態の変化を確認し、シグナル分子の動態を検討していく。シグナルそのものの同定のためにも、半網羅的なメタボロームの解析を行う。また、これまでに明らかになっているシグナル分子については、FRETセンサー分子を用いた解析を行う。ATP, NADH, pyruvate、cAMP などについて行う予定である。シグナルの伝達様式の仮説が得られた場合には、その検証のために、その下流のターゲット分子あるいはターゲット反応系を攪乱する変化を遺伝子操作によって起こし、インスリン分泌への影響を検討する。
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Scientific Reports
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Journal of Biological Chemistry
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