研究課題
糖尿病性神経障害(DPN)の治療には有効な治療法はなく、新規治療法の開発が求められている。我々は、様々な組織幹細胞や前駆細胞を用いDPNに対する有用性を報告しており、その効果は移植細胞からの分泌因子(サイトカインなど)が重要と考えている。近年、幹細胞の中でもヒト乳歯歯髄幹細胞(SHED)が注目されている。SHEDは採取が簡便であること、神経堤細胞由来で高い再生能力が期待できること、間葉系マーカーと神経幹細胞マーカーを発現していることが特徴であり、DPNに対しより有用であると考えられる。そのため我々は、DPN新規治療法開発を目的とし、SHED培養上清のDPNへの効果を本科研費を用いて検討してきた。平成29年度は、細胞実験を基本とし、SHEDの培養上清は脊髄後根神経節神経細胞(DRG)の軸索伸長効果を有していることを示した。さらに培養上清を限外濾過法を用い、培養上清分泌蛋白を100kDa以上、20-100kDa、6-20kDa、6kDa以下の4分画に分け、また超遠心法によってエクソソームを回収し、その軸索伸長効果を検討した。その効果は、エクソソーム添加では認めず、6kDa以下の蛋白分画が最も有効であることが示された。平成30年度は、細胞実験の効果を動物モデルで検証した。DPNを呈するSTZ糖尿病マウスの片足にSHED上清を投与することにより、糖尿病状態で低下した神経機能が改善し、さらに神経血流や神経周囲筋肉内の毛細血管密度の改善も認めた。令和元年度は、上記研究で不足している情報について詳細に検討を行い、論文投稿から受理に至った。SHED培養上清はDRG神経突起伸長作用を有し、その作用にエクソソームは関与しないこと、またDPNに有効である可能性が示唆された。その機序として、培養上清による血流改善も寄与しており、さらに、6kDa以下の分泌蛋白因子が関与している可能性が示された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Diabetes Investigation
巻: 11(1) ページ: 28-38
10.1111/jdi.13085.