研究課題
骨量は骨形成と骨吸収のバランスにより調節され、ホルモンなど細胞外の要因に強い影響を受けることが知られている。ホルモンなどと同様に、骨代謝バランスにおいて細胞外のpH(H+濃度)もまた重要な役割を担うと考えられる。細胞外の低pH環境を感知するGタンパク質共役型受容体ファミリー(OGR1、TDAG8、GPR4)は骨芽細胞、破骨細胞に発現することを、我々はマウス骨髄からの初代培養細胞を用いてすでに明らかにしている。いっぽうで、組織のレベルからの機能解析は遅れている。Gタンパク質共役型受容体は細胞内でシグナルを増幅する受容体であることからmRNA、タンパク質の発現量が低く、またGPCRを正しく認識する抗体はほとんど作製が困難であるからである。そこで、わたしは細胞外pH環境を感知するGタンパク質共役型受容体(GPCR)を介した骨代謝調節の作用点であるマウス組織の骨芽細胞と破骨細胞におけるpH受容体の発現を、高感度プローブを用いたin situ ハイブリダイゼーションを用いて明らかにすることを試みた。近年、骨に埋もれていて機能が未解明であった骨細胞がセンサー機能をもつことが明らかにされ、骨代謝バランスの調節は骨芽細胞破骨細胞だけではなく骨細胞の機能も考える必要がある。組織を用いた受容体の発現分布を調べることによって、pH受容体をもつ新しい細胞の発見にもつながることが期待される。pH受容体ノックアウトマウスを用い、pH受容体は疾患に伴うアシドーシスや炎症局所の酸性化をいち早く感知するセンサーとして骨代謝調節に関わることを明らかにすることを目的とし、将来的には新しい治療薬の開発につながることが期待される。
3: やや遅れている
平成29年度は所属研究機関の都合により所属研究室を異動となった。このため、4月から8月までは研究を予定通り進めることができたが、9月から1月までは研究室の引っ越し準備作業、引っ越し、新しい研究環境のセットアップ作業のために研究を進めることができなかった。しかしながら研究を一時中断せざるをえなかったこの期間においても、本研究のツールとして重要であるpH受容体ノックアウトマウスを維持することができた。このため、平成29年度2月以降はマウスを増やし、マウスを用いた実験を準備中である。また、平成29年度に計画していた研究も2月より再開することができた。
pH受容体(OGR1、TDAG8、GPR4)のmRNAをパラフィン切片上で認識する高感度プローブを用いて、骨組織上での分布を調べた。高感度プローブのため、非特異的な結合も見られる可能性があるため、所持しているノックアウトマウスの組織をネガティブコントロールとして用いた。また、ポジティブコントロールとしては、これまでの研究で用いてきた肺組織を用いた。上記の理由により、計画した組織の解析が一部しか終了していないので、平成30年度も当初より計画していた培養実験に加えて、組織解析を継続する。
平成29年度は所属研究機関の都合により所属研究室を異動となった。このため、4月から8月までは研究を予定通り進めることができたが、9月から1月までは研究室の引っ越し準備作業、引っ越し、新しい研究環境のセットアップ作業のためにほとんど研究を進めることができなかった。このため、研究に用いるpH受容体ノックアウトマウスの維持に必要な支出などを除いては、29年度後半には試薬などを購入することがほとんがなかったため、次年度への繰り越しが生じた。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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