研究課題
高頻度LIPA変異が家族性高コレステロール血症に与える影響について検討を行った。LIPA遺伝子T16P保持者においてはHDL-C/apoAI比が有意に高値であり、同時にnon-HDL-Cが低値である。LIPA変異が作用を及ぼすのは細胞内におけるコレステリルエステルの分解であり、細胞内においての作用はオキシステロール受容体であるLXRを介している可能性がある。今回の検討結果はLXRはHDLの成熟に作用する核内受容体であることを実際に指し示している結果と考えられる。この結果からさらにLXRおよびこれと対をなして作用しているとされるFXRとの相互作用を検討する必要がある。また糖代謝との関連についての検討において、LIPA遺伝子T16P保持者は糖負荷試験におけるinsulinogenic indexが高値である。これは膵β細胞におけるLALの作用が示唆される結果である。膵β細胞において過剰なコレステリルエステル蓄積は細胞毒性がある可能性があり、LIPA変異の影響は生涯にわたるため、長期のコホートにおける影響を検討する予定であり注視される結果である。また共同研究している大学院生がANPTL8が糖代謝脂質代謝両面に影響をもたらすことを報告しており、LIPAとの相互作用を検討する。CESDスクリーニングを高脂血症者300例に行い、LAL欠損症ヘテロ接合体と考えられる症例はあるものの、現時点では完全欠損患者は同定されていない。白人において高頻度変異が報告されているが、人種差がある可能性があり、日本人においては白人ほど頻度は高くない可能性がある。しかしヘテロ接合体でもLAL活性はおよそ半減しており、本邦における冠動脈リスクとしてのLAL活性検討が必要と考えられる結果である。
2: おおむね順調に進展している
計画に準じて患者エントリーが予定通り進んでおり、臨床像について検討できる準備がなされているといえる。
さらに患者エントリーを重ねて研究の順調な遂行に努める。また近年新たな脂質異常症治療薬が臨床で用いられるようになっているが、これらの薬物療法によりLAL活性がどのように変化しているか、様々な治療による影響を検討する。膵β細胞において過剰なコレステリルエステル蓄積は細胞毒性がある可能性があり、LIPA変異の影響は生涯にわたるため、長期のコホートにおける影響を検討する予定であり注視される結果である。また共同研究している大学院生がANPTL8が糖代謝脂質代謝両面に影響をもたらすことを本年度報告しており、LIPAとの相互作用を検討する。
情報収集および成果発表として旅費を計上しているが、情報収集としてH29年度に予定していたアメリカ心臓病会議で予想された発表がH30年度に行われる学会にて発表されることとなり、H30年度の学会に参加する方が有益と判断されたため。このためH30年度の成果発表と情報収集を兼ねて学会参加費として使用する計画とする。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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