研究実績の概要 |
肥満や糖尿病を背景とした慢性腎臓病が増加し、対策が急がれている。糖尿病や肥満による糸球体障害は従来研究されているが、腎予後と強く相関する尿細管間質障害については充分に解明されているわけではない。我々は肥満や糖尿病による近位尿細管障害に着目した。そして我々が同定したアディポカインであるvaspinが、肥満や糖尿病における近位尿細管障害を抑制する可能性が示唆されたため、本研究において検討する。 肥満や糖尿病では小胞体ストレスが亢進しているが、培養近位尿細管(HK2)細胞を用いて、tunicamycin(tm), thapsigargin(tg)で小胞体ストレスを誘導すると、eIF2αリン酸化やGRP78, CHOP発現の増加やアポトーシスの増強が観察され、vaspin添加によりこれらが抑制された。また、オートファジーに関わるLC3、p62もtmやtgで増加したが、vaspinはp62蓄積を抑制しオートファジ不全を軽減する可能性が示唆された。tmやtgによるNLRP3, caspase1, IL1βなどインフラマソーム活性化もvaspinにより抑制された。 小胞体ストレス誘導により、ライソゾーム膜蛋白であるlamp1,lamp2, HSP70などの蛋白発現減少を認めた。既報ではライソゾーム膜障害や透過性亢進にによりカテプシンBが細胞質に放出されてNLRP3インフラマソームが活性化されることが報告されているが、HK2細胞にtm, tgを添加するとカテプシンBのライソゾームから細胞質への局在変化が観察され、vaspinによりこれが軽減された。
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