研究課題
前年度、vaspinが近位尿細管細胞にtunicamycinやthapsigarginで刺激した際の、小胞体ストレス亢進やオートファジー不全を軽減することを示した。本年は、その分子機構としてvaspinと相互作用する分子の同定および作用機序の解明を行った。培養細胞を用いた免疫沈降およびLC-MS/MS解析、western blotにより、vaspinはHSPA1L (Heat shock 70 kDa protein 1L)と結合することを明らかにした。さらに肝細胞や血管内皮細胞と同様に近位尿細管細胞においてもvaspinとGRP78と結合を認めた。さらにHSPA1L, GRP78はクラスリン重鎖と複合体を形成し、細胞表面での局在を確認し、これらの複合体はエンドサイトーシスに寄与すると考えられた。そしてGRP78抗体添加によりvaspinの細胞内への取り込みは抑制された。また小胞体ストレス誘導物質やパルミチン酸刺激により、形質膜のGRP78発現は亢進し、一方で高糖濃度培養では形質膜のGRP78発現は著減した。さらに、近位尿細管細胞において既知であるメガリンによるエンドサイトーシスを介したvaspinの取り込みを検討したところ、メガリンとvaspinの高親和性の結合を認めた。Vaspinは近位尿細管細胞においてメガリンのみならず細胞表面のGRP78やHSPA1Lを介して細胞内に取り込まれ、小胞体やリソソームに輸送され、オルガネラへ作用する機序が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
Vaspinと相互作用する分子を明らかにし、Vaspinが近位尿細管細胞に作用する経路として、メガリンを介した経路、またGRP78やHSPA1Lを受容体としてクラスリン依存性のエンドサイトーシスの経路が明らかになった。
HSPA1Lについてはこれまで殆ど機能が解明されていないため、糖尿病や肥満における近位尿細管細胞で、前述のエンドサイトーシスへの関与以外にどのような機能を有するか明らかにする。またバスピンがHSPA1Lと結合して、細胞内で作用する分子機構を解明する。また、Vaspinは肝細胞表面GRP78・DNAJC1複合体に結合することを示した。そこで近位尿細管細胞におけるDNAJC1の機能についても検討する。
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