研究実績の概要 |
東洋人に多く検出される非肥満非アルコール性脂肪肝(lean NAFLD)のゲノムワイド関連解析のサンプルを拡大し、lean NAFLD、277名をcase群、control群も、東北メディカルメガバンクの no NAFLD健常人群1411名のゲノムデータを用い解析した。その結果、6番染色体HLA遺伝子近傍に関連ピークが新たに検出された。3420名のゲノムDNAを用い、HLA-A, -B, -C, -DRB1, -DQB1, -DPB1のvariable exonのリシーケンスを行った結果、HLA-A*31, HLA-B*54, HLA-C*15, HLA-DRB1*07と脂肪肝との有意な関連を見いだした。また、腸内細菌叢16sメタゲノム解析から、HLA-A*31アレル保有者は、細菌叢の多様性が高く、NAFLDリスクを下げることが明らかになった。NAFLD群はno NAFLD群に比べ、細菌叢の多様性が低下していたことから、HLA-A*31は腸内細菌叢制御を介して、脂肪肝リスクを低下させる可能性が示唆された。 ゲノムワイド関連解析1次解析で見いだした13番染色体の関連領域周辺にマップされた4遺伝子についてノックダウンスクリーニングを行い、1つの遺伝子の発現低下が、コリン・メチオニン欠乏飼料による脂肪蓄積を抑制することを見出したので、CRISPR/Cas9を用いたノックアウトマウスの作製を行った。通常食では差を認めなかったが、コリン・メチオニン欠乏飼料や高脂肪食負荷によってワイルドタイプマウスに比べ、脂肪蓄積が低下する傾向が認められた。肝臓RNAを用いてトランスクリプトーム解析を行い、パスウェイ解析によって、WntやHedgehogシグナル経路の発現変化を認め、この経路に介在するSREBP1の発現変化を介して、脂肪蓄積に変化が生じていることが示唆された。
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