研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)のなかでも、遺伝的関与が強いことが予想される非肥満NAFLDに着目し、そのゲノムワイド関連解析を、東北メディカルメガバンク(ToMMo)との共同研究として実施した。ToMMoの約1411名のサンプルを対照群に、当研究部の保有する5600名のゲノムパネルと21000名のCOEゲノムバンクから抽出した非肥満NAFLD270名をケースとして実施した症例対照研究の結果、6番、7番、12番、13番染色体に新規候補遺伝子領域を見出した。13番染色体の候補領域近傍の4遺伝子について機能的スクリーニングを行い、候補遺伝子のスクリーニングに成功した。さらに、ノックアウトマウスを作製し機能解析を行った結果、通常食では 差を認めなかったが、コリン・メチオニン欠乏飼料や高脂肪食負荷によってワイルドタイプマウスに比べ、肝臓脂肪蓄積が低下する傾向が認められた。また、6番染色体の関連領域はHLA-Bと-DRB1近傍にマップされ、HLAを介した免疫制御が非アルコール脂肪性肝疾患に関与している可能性が示唆された。3420名のゲノムDNAを用い、HLA-A, -B, -C, -DRB1, -DQB1, -DPB1のvariable exonのリシーケンスを行った結果、HLA-B*54:01アレルが脂肪肝の有意なリスクファクターになることを見いだした。脂肪肝発症に腸内フローラの強い関与も報告されており、HLAによる腸内細菌叢制御が関わっているのではないかと考え、3420名のメタゲノム解析結果とHLAアレルとの関連をLinuxサーバーにインストールしたqiimeを使って大規模な情報解析を行った。その結果、NAFLDはコントロールに比べて腸内細菌叢の多様性が著しく低下し、糖・脂質代謝に有益な細菌種の低下が認められ、HLA-B*54-01アレル保因者にも同様の傾向が認められた。
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