研究課題/領域番号 |
17K09865
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
永島 秀一 自治医科大学, 医学部, 講師 (30406136)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HMG-CoA還元酵素 / スタチン / 糖尿病 / 肝臓 / 糖新生 |
研究実績の概要 |
近年、コレステロール合成経路を抑制するHMG-CoA還元酵素(HMGCR)阻害薬スタチンによって、耐糖能悪化のリスクが報告され、コレステロール代謝と糖代謝の関連性が注目されている。スタチンによる耐糖能障害の機序として、複数の機序が示されているが、脂質代謝及び糖代謝における中心的な役割をもつ肝臓において、スタチンの糖代謝に関する研究は限られている。肝細胞株にスタチンを投与した報告では、肝糖新生が亢進し、血糖が上昇する可能性が示されている一方で、申請者らは肝細胞特異的HMGCR欠損(L-HMGCRKO)マウスが重度の低血糖を呈することを報告した。そこで本研究これまでの実績としてはL-HMGCRKOマウス肝臓では糖新生に関わるG6Pase mRNA発現の77%の低下を見出した。加えて申請者らはコレステロール合成経路の下流に位置するスクアレン合成酵素(SS)の肝細胞特異的欠損マウス(LSSKOマウス)を作製しすでに報告しているが、この糖代謝についても解析した。その結果、L-SSKOマウスでも、L-HMGCRKOマウスと同様に12週齢の随時血糖が、対照群に比べて低下を認め、糖新生に関わるG6PaseとPEPCKのmRNAはいずれも約80%の低下を認めた。この理由を探るために、L-HMGCRKOマウス肝臓において、RNA sequence解析を行い、網羅的にnon-coding領域のRNA配列の変化を調べた。その結果糖新生に関わる遺伝子を負に制御することが予想される、あるmicro RNAのクラスターを見出した。また申請者らが改めてマウス初代肝細胞にスタチンを添加したところ過去の報告とは異なり糖新生が抑制されていた。これらのことからコレステロール合成経路の抑制と糖代謝経路の新たな関連が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に用いる遺伝子改変マウスの産出が母親の喰殺などにより当初の予定より少なかったため。加えて遺伝子改変マウスの親となる雄雌つがいケージ数をふやす そうとするもスペースの確保が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究に用いる遺伝子改変マウスの産出が当初の予定より少なく、その原因を究明している。現時点では母親の生育環境におけるなんらかのストレスと考えられ、そのストレスを減らすべく、新規に建立されあ動物実験施設に移動させた。またさらに生育環境を整えるべくシーファードシャックという巣箱をケージ内に入れて対応している。これらのことから喰殺が減少している。加えて、遺伝子改変マウスの親となる雄雌つがいケージ数をふやすため、当大学実験医学センターに申請した。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗がやや遅れているために、使用した研究費に残金が生じた。 マウスや細胞を用いた実験を引き続き行い、その成果を発表する学会への参加旅費のために交付金を使用する必要がある。 使用計画として交付金のなかでマウス維持費30%、実験試薬購入費65%、旅費5%程度を使用することを考えている。
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