研究課題
コレステロール合成経路を抑制するHMG-CoA還元酵素(HMGCR)阻害薬スタチンによって、耐糖能悪化のリスクが明らかになっており、コレステロール代謝と糖代謝の関連性が注目されている。スタチンによる耐糖能障害の機序として、複数の報告があるが、脂質代謝及び糖代謝における中心的な役割をもつ肝臓において、スタチンの糖代謝に関する研究は限られている。肝細胞株にスタチンを投与したin vivoでの報告では、肝糖新生が亢進し、血糖が上昇する可能性が示されている一方で、申請者らは肝細胞特異的HMGCR欠損(L-HMGCRKO)マウスが重度の低血糖を呈することを報告した。そこで本研究では、生体の肝臓におけるHMGCRの抑制が血糖に対して真にどのように変化するのかを解明することを目的とした。これまでの実績としてはL-HMGCRKOマウス肝臓では糖新生に関わるG6Pase mRNA発現の低下を見出した。加えて申請者らはコレステロール合成経路の下流に位置するスクアレン合成酵素(SS)の肝細胞特異的欠損マウス(LSSKOマウス)を作製しすでに報告しているが、この糖代謝については未発表であり、これを解析した。その結果、L-SSKOマウスでも、L-HMGCRKOマウスと同様に12週齢の随時血糖が、対照群に比べて低下を認め、糖新生に関わるG6PaseとPEPCKのmRNAはいずれも有意な低下を認めた。コレステロール合成経路と肝糖新生を結びつけるものとしてSREBP2、SREBP1、LXRといった転写因子を介した機序が想定されたが、いずれもコレステロール合成を抑制すると肝糖新生を更新させる方向に作用するため、既知の経路以外の機序が想定された。その後RNA sequence解析を行いmiR-96/182/183クラスターがコレステロール合成経路の抑制と肝糖新生抑を連関させる可能性があることを見出した。
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Endocrinology, Diabetes & Metabolism Case Reports
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