研究課題/領域番号 |
17K09867
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
後藤田 貴也 杏林大学, 医学部, 教授 (60322062)
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研究分担者 |
山本 隆史 杏林大学, 医学部, 助教 (00572033)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / トランスポーター / ビリルビン / 脂肪蓄積 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
①ビリルビン(Bil)の取り込み実験系の構築と評価 これまでの実験結果よりBilをSlc22a18の基質候補と考えoocyteを用いたSlc22a18の強発現系を構築し、[3H] Bilの取り込みを評価した。まず、Slc22a18 cRNAを作製しoocyteに注入後western blotによりSlc22a18の強発現を確認した。また、Bilを基質とするOATP-Cの強発現群に対して[3H] Bilを添加し、放射線量の上昇を確認した。次にSlc22a18の強発現下で[3H] Bilを培養液中に加えてoocyte中の放射線量を測定したが、予想に反して有意な放射線量の上昇を認めず、Slc22a18単独発現下でBilが直接の基質となる可能性は低いことが示唆された。さらに、Slc22a18を発現させたoocyte内に[3H] Bilを注入してBilの排出実験も行ったが、培地中に排出あるいは細胞内に残存する放射線量にも対照と差がなく、Slc22a18は排出経路においてもBilを基質とする可能性が低いことが示唆された。 ②Bil以外のSlc22a18の内因性基質の探索 Slc22a18KO及びWTマウス各3匹における肝臓抽出物よりCE-TOFMS法によるメタボローム解析を行った。その結果、統計学的に有意であったものは3化合物(アルギニン、Gly-Leu、IMP)であった。これらの化合物はKO/WT比が0.7、0.8、1.3と変化量が小さく、また同時に行ったSlc22a18の一過性の強発現及び発現抑制群における化合物濃度と一致した挙動は認められなかった。またKO/WT比が最小(0.12)、最大(2.4)の化合物としてcholic acid及びisethionic acidを認めたが、これら化合物は群内におけるばらつきが大きく統計学的な有意差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、oocyteにおけるビリルビンの取り込み系を構築し、Slc22a18をoocyteで単独で発現させた条件下において、ビリルビンが基質となりうるか否かを評価することはできた。またビリルビン以外の基質探索の一環としてメタボローム解析も行った。oocyteにおけるビリルビン取り込み系の構築に時間を要し、また、取り込み系では変化が認められなかったため排出系の評価も行うこととなり当初の想定以上に時間を要し、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Oocyteを用いた実験より、Slc22a18を単独で強発現させても、ビリルビンの取り込み・排出に変化は認められなかった。Slc22a18がトランスポーターであることと、遺伝子改変動物及び培養細胞におけるビリルビンを用いた一連の実験結果を踏まえると、ビリルビンが直接の基質である可能性は低いという今回の結果は想定外であった。しかし一方で、Slc22a18が正常に働くためには他の分子の存在が必要である可能性も考えられ、oocyteにおいて単独でSlc22a18を強発現させた場合に機能性が保持されているのかの確認ができていない現段階においては、ビリルビンが基質である可能性を完全には排除できない。メタボローム解析については、現段階では取り込み実験等に発展させるような有望な化合物を見出せていないが、今年度の実験でoocyteを用いた強発現系の確立はできたため、Slc22a18の外因性基質としての可能性が報告されているクロロキンの取り込み実験などを行い、基質探索を継続する。
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