研究課題/領域番号 |
17K09868
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
櫻井 裕之 杏林大学, 医学部, 教授 (00508294)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尿酸 / SLC2A9 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
家族性高尿酸血症における尿酸トランスポーターSLC2A9領域の遺伝子変異が、どのようなメカニズムで腎臓からの尿酸排泄を低下させているかの検討を行い、SLC2A9の機能に影響を与えているものは調べた範囲ではまだない。そこで、高尿酸血症の家系で、SLC2A9の機能亢進でしか説明できない患者ゲノムにつき前年度に引き続きSLC2A9の発現調節に関わる変異を探索した。公共ゲノムデータベースと比較し、SLC2A9遺伝子の転写因子結合部位上にある変異のうち、アレル頻度が0.01未満のレアバリアントに着目したところ7か所に変異が見出された。これらの変異がSLC2A9の転写活性に影響を与えるか検討するため、変異部位を中心として1000bp程度の配列をクローニングしSLC2A9のプロモーターの上流に組み込み、Dual-Luciferaseレポーターアッセイを行ったところ、一つの変異でLuciferase活性の上昇が見られた。さらにレポーターアッセイ時にSLC2A9の転写に関わる転写因子HNF4Aを同時にトランスフェクションしたところ、変異の有無によるLuciferase活性の差が大きくなった。また別の変異でも転写活性の上昇が見られた。 この二か所の変異が、実際に細胞内でSLC2A9の転写活性を上昇させるか検討を行うため、CRISPR-Cas9システムを利用しHepG2細胞株のゲノムにこれらの変異の導入を試みた。Cas9/sgRNAの複合体と、変異を含むssDNAのドナーDNAを、エレクトロポレーション法によりHepG2細胞内に導入した。ゲノム編集の効率はT7E1アッセイにより評価し、25%程度であった。ゲノム編集を行った細胞群から変異が導入されているクローンのスクリーニングを行い、これまでのところ、変異の一つは正しく導入されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SLC2A9の転写調節領域にある遺伝子変異を導入するためのCRISPR-Cas9システムが当初のキットではうまくいかず、別のもので行うことになった。また、計画で申請したBeVo細胞では増殖が遅く遺伝子改変もうまく行かなかったので細胞をHepG2に変更せざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度まで延長が認められたので、HepG2細胞にSLC2A9の転写調節領域の遺伝子変異2箇所をそれぞれ単独、両方同時に導入して、SLC2A9の発現が変化するかを確認する。これにより当初の仮説が正しいかが判明するはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスポーター遺伝子導入を行う細胞とシステムの確立に時間を取られ、計画通り進まなかった。現在遺伝子導入はうまくいくようになったので、そのシステムで転写調節部位に変異を導入した遺伝子に改変して、トランスポーター遺伝子の発現が増加するか検討する予定である。
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