家族性高尿酸血症における尿酸トランスポーターSLC2A9領域の遺伝子変異が、どのようなメカニズムで腎臓からの尿酸排泄を低下させているかの解明を目指し、前年度に達成できなかった、SLC2A9発現細胞株に患者でみられる変異を導入してSLC2A9の発現を調べた。SLC2A9発現細胞としてはHepG2細胞を使用した。この細胞では、転写因子HNF4Aの発現によりSLC2A9の転写が亢進することを確認した。高尿酸血症の家系で、SLC2A9遺伝子の転写因子結合部位上にある変異のうち、ルシフェラーゼアッセイで活性の上昇が見られた、2つのレアバリアントをCRISPR-Cas9システムを利用しHepG2細胞株のゲノムに導入した。ゲノムへの組み込みには成功したが、この変異プロモーター領域をもつHepG2細胞では、HNF4AのトランスフェクションによってのSLC2A9の転写活性が、野生型に比較しての上昇は認められず、これらの変異がSLC2A9の転写活性上昇に関与したとは考えにくいと結論付けられた。他に尿酸排泄低下型で、家族のゲノム採取可能な症例が得られず、残念ながらSLC2A9の発現調節領域の変異による同蛋白の過剰発現が高尿酸血症の発症の原因であろうとの仮説の検証には至らなかった。
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