研究課題
脳卒中・心血管疾患の原因疾患である動脈硬化症の克服は世界的にみても喫緊の課題である。マクロファージコレステロール貯留は動脈硬化病変形成で閾値となるステップであるが、同機構を標的とした治療は実用化されておらず、コレステロール代謝制御機構にかかる概念の刷新が求められる。我々ははこれまでに、動脈硬化症を制御する極めて独特な機構として、細胞内プロテアーゼ「カルパイン」ファミリーを検証してきた。この中で、非プロテアーゼ型「カルパイン-6」がCWC22/pre-mRNA成熟機構に干渉し、動脈硬化症を増悪化に導くことを解明した(J Clin Invest, 2016)。分子機構としては、カルパイン-6がマクロファージの受容体非依存的な「飲作用」経路を介してnative LDLの取込みを促進し、コレステロール貯留を増加させることを解明した。当該年度の研究によって、正常マウス脂肪組織の間質にはマクロファージの浸潤がみられ、脂肪組織内のマクロファージはカルパイン-6を発現していることが明らかとなった。カルパイン-6欠損マウスの脂肪間質を用いた次世代シーケンス解析により、カルパイン-6欠損によりスプライソソーム(pre-mRNA成熟関連機構)、エンドサイトーシス、ファゴサイトーシス機構に有意な変化が検出された。また、リポタンパク質受容体ならびに複数のRabファミリー分子を含む細胞内小胞輸送関連分子に顕著なスプライスバリアントの発現変動が検出された。
2: おおむね順調に進展している
カルパイン-6の下流に位置するスプライスバリアントがいくつか検出され、動脈硬化症やその他の炎症生疾患との関連が注目される。
当該年度の研究においては、脂肪組織間質を研究材料としてカルパイン-6欠損によるスプライスバリアントの解析を行ってきたが、次年度は動脈硬化モデルマウスの大動脈を用いてスプライスバリアントの解析を行う。これらのスプライスバリアント数種について、サイトカインでM1/M2サブセットに分化させたマウス骨髄由来マクロファージにおける発現量を定量する。これにより、動脈硬化原性のM1マクロファージで有意なスプライスバリアントを決定する。このスプライスバリアントを培養マクロファージに発現導入し、コレステロール取込み機構、死細胞の貪食能(エフェロサイトーシス)、アポA-1によるコレステロール搬出能など、動脈硬化に関連した細胞機能を検討する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)
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