研究課題
我々の検討でグルタミン代謝のマスターレギュレーターGLS2は肥満・糖尿病および癌の共通の分子基盤として重要であることがわかってきた。しかしながら肥満 および糖尿病におけるGLS2を介した詳細な分子メカニズムや臓器連関については全く明らかとなっていない。そこでGls2ノックアウトマウスにおける呼吸代謝測 定用マウス摂食・運動量測定装置を用いてエネルギー摂取および消費バランスの評価、行動精神運動障害を各種検査にて解析した。まず、Gls2ノックアウトマウ スでは、wild typeに比較して、夜間の摂餌量は変化ないが日中の摂餌量が有意に多いことが明らかとなった。また自発運動活性計測試験Actimoとして、16-33週 齢のWTおよびKOをそれぞれ5匹、7匹ずつ使用し、運動活性計測用ケージ内にマウスを入れ、運動活性計測を横切った回数を 60 分 間ごとに積算し、計測は午後 6 時 に開始し、15日間計測した。その結果Gls2ノックアウトマウスではWTに比較して運動量が増加していることが示された。現在膵β細胞特異的Gls2コンデイ ショナルノックアウトマウスをFLP, loxpシステムを用いてGls2 exon2-7を飛ばし作成に成功し、膵臓におけるGls2の役割を検討している。膵島単離がうまくいかず時間を要したが膵β細胞特異的Gls2ノックアウトマウスでは糖尿病を発症しインスリン分泌低下、グルカゴン増加を呈することが明らかとなりつつある。
3: やや遅れている
膵臓β細胞特異的Gls2ノックアウトマウス作成には成功したが、膵島単離がなかなかうまくいかず、時間を要したがようやく系が確立し現在解析を進めている。
糖尿病は糖新生、インスリン分泌、インスリン抵抗性を通じて多臓器にわたり複雑に制御されている。Gls2ノックアウトマウスが肥満や糖尿病を発症するその機 序として、摂餌量増加や行動異常が示唆されたが、今後は膵β細胞におけるインスリン・グルカゴンへの役割に焦点をあて肥満・糖尿病における臓器特異的GLS2 の役割、臓器連関を明らかとし新規治療薬としての可能性を探る。
研究の延長申請に伴い次年度使用額が生じた。次年度は高脂肪食下Gls2コンデイショナルノックアウトマウスにおけるインスリン低下・グルカゴン増加を伴う糖尿病発症の分子メカニズムにつき、膵島単離細胞を用いて解析をすすめる。
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Sci Rep.
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