研究実績の概要 |
両側性原発性アルドステロン症(PA, Primary Aldosteronism)の原因として、自己抗体によるアルドステロン分泌過剰症の存在が示唆される。これまで原因不明とされてきた多くの両側性PAの病態解明つながる成果と考えられる。今後、さらに研究を進め、①両側性PAにAIPA(Autoimmune induced Primary Aldosteronism)の占める割合、②各自己抗原の出現頻度を明らかにしていく必要がある。 健常者や片側性PAには認められず、CYP11B2刺激性IgG症例のIgGと結合する自己抗原候補は、すべてイオンチャンネルやポンプであった。 自己抗原候補の膜タンパク質を固相化したELISAにより抗体価測定を試みたが、測定が困難であった。これは、本疾患の病態がV型アレルギーによるためと考えられた。膜タンパク質、特にイオンチャンネルやポンプの細胞外の構造を認識して結合する自己抗体によってイオン輸送が変化することが原因であると考えられる。膜タンパク質を単にウエルに固相化した場合には、膜に埋め込まれている膜タンパク質の立体構造が再現できない。そこで、膜タンパクが膜に埋め込まれている状態を再現するため、プロテオリポソームをウエルに固相化する方法に取り組むことにした。今後、抗体価測定系を確立し、AIPAを感度、特異度よく診断できる自己抗原を選定する。遺伝学的に判明しているPAの原因タンパク(KCNJ5, ATP1A1, ATP2B3, CACNA1D, CACNA1H, CLCN2)が自己抗原となっている可能性も考慮し、これら原因遺伝子タンパクおよび、15種の自己抗原候補タンパク質について抗体価を測定し、AIPAの診断マーカーを選定する予定である。
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