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2018 年度 実施状況報告書

多能性幹細胞から視床下部と下垂体の機能的ユニットを作る

研究課題

研究課題/領域番号 17K09878
研究機関名古屋大学

研究代表者

須賀 英隆  名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20569818)

研究分担者 有馬 寛  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードヒトiPS細胞 / 視床下部-下垂体ユニット / CRH-ACTH
研究実績の概要

平成30年度は、下垂体ACTH細胞と視床下部CRHニューロンとがin vitroで同時誘導される条件を見出し、CRHとACTHとが一つのユニットとして機能していることを示した。
我々が本研究課題より以前に開発した「ヒトES/iPS細胞から下垂体前葉への分化法」では、分化前半は視床下部と下垂体の前駆細胞がそれぞれ共存して誘導されているが、そこから先の成熟過程では、下垂体前駆細胞はACTH細胞などへ最終分化を達成しているのに対して、視床下部前駆細胞は途中で分化を止めてしまい、うまく最終分化しない。そこで、平成29年度に開発した「ヒトiPS胞から視床下部CRH神経への分化法」の条件のうち、下垂体前葉分化法との違いを検討した上で、神経成熟に重要と想定される条件を下垂体前葉分化条件に加えた。その結果、一つの細胞塊の中に、ACTHの染まる細胞とCRHの染まる細胞とが共存する状態を作り出すことに成功した。言い換えれば、CRHニューロンとACTH産生細胞とが1つの細胞塊内に共存したユニットが誘導できたと言える。従って、当初計画に次善の策として含めていた産業技術総合研究所の2-chamber培養装置を用いた実験は行わなかった。
次に、作出したCRH-ACTHユニットが機能的に連携しているかどうかをin vitroで検討した。外因性のCRHを添加しなくても培養液中のACTH分泌が高まる結果を得たことから、ユニット内のCRHニューロンが機能して内因性にCRHを分泌していることが示唆された。また、低グルコース培地への暴露によりACTH分泌が高まること、この作用はCRHレセプター阻害薬により有意に抑制されること、などからCRHのコントロール下にACTHが置かれていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度の研究計画に沿った研究を実施し、所期の成果を達成したため上記と判断した。この成果を論文としてまとめ、現在投稿中である。

今後の研究の推進方策

当初の全体計画に沿って、平成31年度研究計画を実施していく。具体的にはCRH-ACTHユニットの機能的連携がin vitroで示されたら、次に、異所性移植による効果判定を行う。対照群は、ACTH細胞のみの異所性移植群とし、CRH-ACTHユニットがより高度な機能を果たすかどうか、特にストレス下などで差が出るかを調べる。
動物はマウスもしくはラットを用いる。既に我々は下垂体機能不全モデルマウス・ラットの作成技術を保持している。また、腎皮膜下や皮下などへの異所性移植手技、活動性などの効果判定の評価系も保持している。
オプションとして、ACTH細胞を正所性移植することで、レシピエント動物の視床下部との連携が再構築できないか調べ、CRH-ACTHユニットと比較することも検討中である。正所性、つまりトルコ鞍内へ移植するためには、マウスやラットではサイズが小さすぎて技術的に困難である。サルを用いれば物理的に可能なサイズと言える。既に滋賀医科大学・動物生命科学研究センターと共同研究契約を締結済みであり、カニクイザルを用いて、正所性と異所性移植との比較を行うことで倫理申請中である。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 視床下部と下垂体とのハイブリッド2019

    • 著者名/発表者名
      須賀英隆、有馬寛
    • 雑誌名

      月刊細胞

      巻: 51 ページ: 20-24

  • [雑誌論文] Chemical chaperone 4-phenylbutylate reduces mutant protein accumulation in the endoplasmic reticulum of arginine vasopressin neurons in a mouse model for familial neurohypophysial diabetes insipidus.2018

    • 著者名/発表者名
      Tochiya M, Hagiwara D, Azuma Y, Miyata T, Morishita Y, Suga H, Onoue T, Tsunekawa T, Takagi H, Ito Y, Iwama S, Goto M, Banno R, Arima H.
    • 雑誌名

      Neurosci Lett.

      巻: 24 ページ: 50-55

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2018.06.013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Functional Pituitary Tissue Generation from Human Embryonic Stem Cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Kano M, Suga H, Kasai T, Ozone C, Arima H.
    • 雑誌名

      Curr Protoc Neurosci.

      巻: 83 ページ: e48

    • DOI

      10.1002/cpns.48

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Application of pluripotent stem cells for treatment of human neuroendocrine disorders.2018

    • 著者名/発表者名
      Suga H.
    • 雑誌名

      Cell Tissue Res.

      巻: 375 ページ: 267-278

    • DOI

      10.1007/s00441-018-2880-4.

    • 査読あり
  • [学会発表] 間脳下垂体における再生医療2019

    • 著者名/発表者名
      須賀英隆
    • 学会等名
      第29回日本間脳下垂体腫瘍学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 視床下部・下垂体疾患に対する再生医療2019

    • 著者名/発表者名
      須賀英隆、有馬寛
    • 学会等名
      第18回日本再生医療学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 転写因子OTX2は視床下部からのFGFシグナルを介して下垂体を分化させる2018

    • 著者名/発表者名
      松本 隆作、須賀 英隆、井口 元三、福岡 秀規、長谷川 奉延、六車 恵子、小川 渉、青井 貴之、高橋 裕
    • 学会等名
      第91回日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] マウスES細胞視床下部誘導系におけるTanycytes様細胞の検討2018

    • 著者名/発表者名
      加納麻弓子、須賀英隆、山田登美子、有馬寛
    • 学会等名
      第91回日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] 小胞体ストレスのin vitro実験系の確立~家族性中枢性尿崩症の疾患特異的iPS細胞を用いた検討~2018

    • 著者名/発表者名
      光本一樹、須賀英隆、加納麻弓子、大曽根親文、宮田崇、橡谷昌佳、萩原大輔、佐藤彗太、坂本浩隆、有馬寛、
    • 学会等名
      第91回日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] 多能性幹細胞の極性発現のための濃度勾配培養チャンバーの開発2018

    • 著者名/発表者名
      須賀英隆、杉浦慎治、長崎玲子、田村磨聖、佐藤琢、長崎晃、金森敏幸
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第37回研究会
  • [学会発表] マウスES細胞由来視床下部神経の同種および異種移植2018

    • 著者名/発表者名
      長崎 弘、小谷 侑、須賀英隆、金子 葉子
    • 学会等名
      第41回日本神経科学大会
  • [学会発表] マウスES細胞由来-視床下部組織におけるMCHニューロンの組織学的および神経化学的特徴2018

    • 著者名/発表者名
      小谷侑、須賀英隆、金子葉子、中島昭、 長崎弘
    • 学会等名
      第41回日本神経科学大会
  • [学会発表] 下垂体の再生医療に向けて2018

    • 著者名/発表者名
      須賀英隆
    • 学会等名
      第6回下垂体スキルアップカンファレンス
    • 招待講演
  • [学会発表] マウスES細胞視床下部誘導系後期に残存するRax陽性細胞は腹側Tanycytesと類似する2018

    • 著者名/発表者名
      加納麻弓子、須賀英隆、有馬寛
    • 学会等名
      第36回内分泌代謝学サマーセミナー
  • [学会発表] 試験管内で再現する下垂体発生2018

    • 著者名/発表者名
      須賀英隆、有馬寛
    • 学会等名
      第33回日本下垂体研究会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Functional hypothalamus and pituitary induction in vitro from human pluripotent stem cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Hidetaka Suga, Chikafumi Ozone, Koichiro Ogawa, Takatoshi Kasai, Kazuki Mistsumoto, Hiroshi Arima
    • 学会等名
      5th Tissue Engineering and Regenerative Medicine International Society World Congress
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] マウス ES 細胞視床下部分化誘導系における Tanycytes 様細胞2018

    • 著者名/発表者名
      加納麻弓子、須賀英隆、有馬寛
    • 学会等名
      第8回生理研・名大医合同シンポジウム
  • [学会発表] マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax+細胞はTanycytesと類似する2018

    • 著者名/発表者名
      加納麻弓子、須賀英隆、有馬寛
    • 学会等名
      第45回日本神経内分泌学会学術集会
  • [学会発表] マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax+細胞はTanycytesと類似する2018

    • 著者名/発表者名
      加納麻弓子、須賀英隆、有馬寛
    • 学会等名
      医学系研究科・創薬科学研究科・環境医学研究所三部局交流シンポジウム
  • [学会発表] 小胞体ストレスのin vitro実験系の確立~家族性中枢性尿崩症の疾患特異的iPS細胞を用いた検討~2018

    • 著者名/発表者名
      光本一樹、須賀英隆、坂本浩隆、有馬寛
    • 学会等名
      医学系研究科・創薬科学研究科・環境医学研究所三部局交流シンポジウム
  • [図書] 実験医学別冊 決定版オルガノイド実験スタンダード:開発者直伝!珠玉のプロトコール集2019

    • 著者名/発表者名
      加納麻弓子、須賀英隆
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-2239-9

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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