研究課題
令和元年度は、ヒトiPS細胞塊をin vitroで成熟させたCRH-ACTHユニットを、下垂体機能低下マウスの腎皮膜下に移植することで、機能を示唆する結果を得た。免疫不全SCIDマウスの下垂体を除去し、CRH負荷試験によってACTH自己分泌が完全枯渇したことを確認した個体をレシピエントとして用いた。腎皮膜下に、ヒトiPS細胞由来CRH-ACTHユニットを移植し、効果を検討した。移植によりマウス血中ACTH濃度が上昇することを確認した。以上から、生着が得られたと考えられる。このマウスにインスリンを投与することで低血糖を誘発したところ、血中ACTHが著増した。低血糖状態を、移植ユニット内のグルコース感受性神経が感知し、CRH神経、ACTH細胞へとシグナルが伝わった可能性がある。一方で、マウスなど生体を用いたin vivo実験では、低血糖刺激は他のホルモン系も賦活化し、移植片のACTH細胞へ別経路で刺激が伝わる可能性がある。今後条件を詰めることで、移植片のCRH神経が関与しているか否か詳細に検討していく。ただし、CRH-ACTHユニット移植は、CRH神経を含有する視床下部組織内に分化が不十分な状態に止まった細胞も残存しており、移植によって神経系細胞を主とした良性腫瘍が生じる個体が多発した。従って今後、腫瘍化を阻止する方法の検討も必要である。副産物的な結果として、CRH神経を含む視床下部組織と一緒に成熟させた下垂体ACTH細胞は、電子顕微鏡で非常に豊富な分泌顆粒を含むことが判明した(Kasai T et al. Cell Rep. 2020)。これを踏まえ、本分化法で視床下部と下垂体が一緒になって成熟する点をin vitroモデルとして利用することで、視床下部から分泌されるFGFシグナルやBMP4シグナルが下垂体成熟に重要であることを、ヒト細胞において明確に示した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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