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2018 年度 実施状況報告書

SIADHによる慢性低ナトリウム血症の中枢神経系への影響の解明と新規治療薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K09879
研究機関藤田医科大学

研究代表者

椙村 益久  藤田医科大学, 医学部, 教授 (50456670)

研究分担者 岩間 信太郎  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00733536)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードSIADH
研究実績の概要

研究実績SIADHモデル動物で慢性低Na血症の中枢神経症状を検討した。
1. SIADH慢性低Na血症モデル動物の作成;浸透圧ミニポンプを用いてバゾプレシンのアナログ製剤dDAVP の持続皮下投与と液体食投与によって低Na血症を誘導した。dDAVPの濃度などを調整することにより、血清Na濃度約110 -120台 mEq/Lで安定した慢性低Na血症の作成に成功した。この血清Na濃度は実地臨床でもよく遭遇する濃度であり、今後SIADHの病態について検討するのに、有用で興味深いSIADH慢性低Na血症モデルが開発できたと考えられる。
2. SIADH慢性低Na血症モデル動物の行動解析;1の動物モデルを用い、各種行動解析を行った。認知・記憶機能の行動解析としてT字迷路試験、Fear Conditioning試験を行い、慢性低Na血症動物で記憶障害が示唆された。また、明暗試験、オープンフィールドテスト、ポーソルト強制水泳試験、尾懸垂試験、ローターロッド試験などを行い、精神神経学的症状、協調運動異常について興味深い所見を得た。また慢性低Na血症から血清Na濃度を正常化することによって精神神経学的症状などの回復が認められ、様々な症状が慢性低Na血症に伴うものであることをさらに明瞭に示すことができた。
3. 組織学的検討;慢性低Na血症動物において脳神経細胞、グリアを免疫組織学的手法などを用い観察した。精神神経学的症状などと関連する脳神経細胞の興奮亢進を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SIADHモデル動物の作成に関しては、dDAVPと液体食投与によって低Na血症を誘導することに成功した。また、dDAVPの濃度などを調整することにより、血清Na濃度約110 -120台 mEq/Lで今後解析を計画していた血清Na濃度の安定した慢性低Na血症に成功した。また、この動物モデルを用い、予定していた認知精神学的行動解析を行うことができた。文脈恐怖条件づけを行い、低Na血症動物で記憶障害が示唆された。また、精神神経学的解析としてオープンフィールドテスト、強制水泳試験、尾懸垂試験などを行いうつ、不安など精神神経学的症状について解析することができた。また運動機能に関してもローターロッド試験などで検討を行ない、協調運動異常について興味深い所見を得ることができた。また、低Na血症動物で、約1ヶ月後の慢性低Na血症状態において脳などサンプリングを行いc-Fos、アストロサイト活性化などについて免疫染色を行い、有意な所見を得ることができた。

今後の研究の推進方策

今後行動解析実験を繰り返し、再現性の確認、統計学的な解析、評価を進める。また、実地臨床で使用される治療法である水分制限、塩分摂取、またバソプレシン受容体拮抗薬によるNa補正方法の違いによって、精神神経学的症状の回復に違いがあるかどうかについて検討する。また、病理学的に異常な活動の神経細胞の検索をさらに実施し、病態に関与する神経細胞を同定する。また組織学的には同定されにくい細胞活動の異常の検索、さらにin vivoでの細胞活動を検討するため、in vivo Caイメージングを予定している。また、今後機序の解明として様々なニューロペプチドの関与が考えられるが、例えば低Na血症というストレス下では、ストレス応答に関わるCorticotropin releasing hormone(CRH)ニューロン活性が亢進する可能性が考えられる。以前からCRH受容体がうつ、不安様行動などと関連することが知られている。従って、CRH、CRHR1, CRHR2, Urocortinなどの発現を解析する。またグルタミン酸濃度上昇が各種神経症状に関与していると考えられるため、低Na血症の認知機能など中枢神経症状の改善にメマンチンが有効である可能性が考えられ、また、従来我々が見出したアストロサイトのグルタミン酸取り込みの低下がその機序に関与している可能性が考えられ、取り込みを亢進させる新規治療薬候補の精神神経学的症状の影響について検討予定である。

次年度使用額が生じた理由

ほぼ計画通り研究は遂行されている。次年度、新規治療法の探索などの検討を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (4件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Critical role of rabphilin-3A in the pathophysiology of experimental lymphocytic neurohypophysitis.2018

    • 著者名/発表者名
      Yasuda Y, Iwama S, Kiyota A, Izumida H, Nakashima K, Iwata N, Ito Y, Morishita Y, Goto M, Suga H, Banno R, Enomoto A, Takahashi M, Arima H, Sugimura Y.
    • 雑誌名

      J Pathol.

      巻: 244 ページ: 469-478

    • DOI

      10.1002/path.5046.

    • 査読あり
  • [学会発表] Rabphilin-3A as a Targeted Autoantigen in Lymphocytic Infundibulo-neurohypophysitis (LINH)2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshihisa Sugimura
    • 学会等名
      The 27th European Diabetes Congress
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 低ナトリウム血症についての最近の知見 副腎機能低下症の知見を含めて2018

    • 著者名/発表者名
      椙村益久
    • 学会等名
      第5回内分泌生涯教育講習会
    • 招待講演
  • [学会発表] リンパ球性漏斗下垂体後葉炎の診断マーカー 抗ラブフィリン3A抗体2018

    • 著者名/発表者名
      椙村益久
    • 学会等名
      日本内科学会第74回北陸支部生涯教育講演
    • 招待講演
  • [図書] 内分泌代謝科専門医研修ガイドブック 低ナトリウム血症2018

    • 著者名/発表者名
      椙村益久
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      診断と治療社
  • [図書] 心不全(第2版)上-最新の基礎・臨床研究の進歩- 血液生化学検査 バソプレシン2018

    • 著者名/発表者名
      藤沢治樹、椙村益久
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      日本臨牀社
  • [図書] 内分泌・脂質・尿酸 コンサルタント 低ナトリウム血症をみたらどのように診断し治療しますか2018

    • 著者名/発表者名
      椙村益久
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      金芳堂
  • [図書] 週刊医学界新聞 慢性低ナトリウム血症の症状に注意を QOL低下および生命予後悪化との関連について2018

    • 著者名/発表者名
      椙村益久
    • 総ページ数
      1
    • 出版者
      医学書院
  • [産業財産権] リンパ球性漏斗下垂体後葉炎実験動物モデルを作製する方法2019

    • 発明者名
      椙村益久他
    • 権利者名
      学校法人藤田学園、国立大学法人名古屋大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2019- 12583

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公開日: 2019-12-27  

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