研究課題
代表者はこれまでに、2型糖尿病感受性遺伝子KCNQ1が糖尿病発症、ならびに膵β細胞不全を起こすメカニズムについて、遺伝子組換えマウスを用いて解明してきた。また、同様に日本人特有の2型糖尿病感受性遺伝子として報告されているEIF2AK4遺伝子についても、欠損マウスを用いて糖尿病発症機序を明らかにしている。しかしながら、マウスでの研究成果がヒトにも当てはまるかどうかは明らかではない。そこで、ヒトiPS細胞を分化誘導することによって、ヒト膵β細胞においても同様の現象が起こるかどうかについて検討を行った。まず、ヒトiPS細胞(FF201B7細胞)を用いて、膵β細胞への分化誘導実験を行った。分化誘導法については、既報を参考にしつつ、いくつかの論文を合わせることによって、オリジナルの方法を採用した。膵芽以降については、浮遊培養にて培養を行い、凝集した状態で分化誘導を進めた。内胚葉、原始腸管、膵芽への分化誘導を、HNF1α、PDX1、NKX6.1などの分化マーカーにて確認した。さらに、内分泌細胞への分化マーカーであるNGN3の発現が認められた。同時にグルカゴンの発現も免疫染色、リアルタイムPCRにて確認されたが、インスリンの発現については確認されなかった。また、現在代表者が保有しているヒトiPS細胞11クローンのうち、8クローンでKCNQ1遺伝子におけるリスクアリルが確認された。うち1つは、リスクアリルをホモで保有するクローンであった。今後は、これらのリスクの有無が分化誘導した膵β細胞のviabilityに影響するかどうかを検討する予定である。
3: やや遅れている
初年度でインスリン陽性細胞への分化誘導法を確立しておく予定であったが、グルカゴン陽性細胞は確認できたものの、インスリン陽性には至らなかった。また、分化条件が一定していないのか、実験ごとに分化誘導の結果が変動するため、今後は実験条件について再度検討する必要がある。
実験条件を一定にしたうえで、インスリン陽性細胞を安定して得られることが2年目の第一目標である。そのうえで、KCNQ1遺伝子およびEIF2AK4遺伝子のリスクアリル別の膵β細胞viabilityを評価したい。2年目中には、ゲノム編集によるSNPの塩基置換を行いたい。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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