研究課題
近年、電位依存性カリウムチャネルの一つであるKCNQ1遺伝子の一塩基多形(SNP)と2型糖尿病発症との関連が、わが国の異なる2グループから報告され、非常に注目されている。こうした「遺伝因子」の同定が進みつつあるが、2型糖尿病発症におけるメカニズムに関しては未だにほとんどわかっていないのが現状である。我々は、マウスを用いたこれまでの解析によって、Kcnq1遺伝子内に変異が存在すると出生時より膵β細胞量が減少することを明らかにしている(PNAS, 2015)。しかしながら、これらはマウスを用いた実験データであり、実際のSNPがどのような役割を担っているかは、ヒトの膵β細胞を使用しないと判断できない。そこでKCNQ1遺伝子のSNPを保有している個人の組織よりiPS細胞を作製し、膵β細胞に分化させることにより、膵β細胞におけるSNPの重要性を確認することにした。KCNQ1のSNPの有無が、膵β細胞への分化、もしくは分化した膵β細胞のviabilityに影響するかどうかについての検討を行うべく本研究を開始した。既報(Toyoda et al. Stem Cell Research, 2015)をもとに、ヒトiPS細胞からインスリン陽性細胞への分化を試みた。iPS細胞の分化誘導実験を行った。各種試薬を加えて培養することによって、Neurogenin3の発現が確認され、MAFAやMAFBも認められるに至った。この時点において、膵内分泌細胞まで分化誘導されていると考えられたため、InsulinおよびGlucagonの免疫染色ならびに定量PCRを行ったところ、Glucagonの有意な発現が確認された。しかしながら、Insulinの免疫染色では非特異的な反応が認められたことから、膵β細胞への分化誘導に成功したとは言えず、今後もプロトコールを調整していく必要がある。
3: やや遅れている
十分に進展させることができなかった原因としては、複数の細胞株を同時に分化誘導させるうえで、それぞれの株において誘導効率や条件も異なっていることが実験中に明らかになってきた。既報の方法そのままでは十分な分化誘導が得られず、我々自身のオリジナルメソッドを検討しているところだが、株による違いもあることから、難渋しているところである。
まず、最も分化誘導効率の良い細胞株に集中し、その細胞株において再現性高くインスリン陽性が確認されることを目指す。そのうえで、ゲノム編集によるインスリン発現変化を確認することを最優先とする。複数の株を扱うと、時間および経済的にも非効率的であり、そのような方針で臨むこととした。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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