研究課題
1.CALN1発現調節によるin vitroでの解析副腎皮質癌細胞株 (HAC15) にCALN1を過剰発現させると,アルドステロン合成酵素 (CYP11B2) mRNA発現量は5.3倍に増加し (P<0.001),上清中のアルドステロン濃度は10.0倍に増加した (P<0.01).CALN1遺伝子発現を抑制すると,baselineではアルドステロン値に変化はみられなかったが,A-II刺激後のアルドステロン分泌は抑制された(P<0.05).既報からCALN1はゴルジ体あるいは小胞体に局在することがわかっており,副腎皮質におけるCALN1の細胞内局在を検討した.CALN1遺伝子のN末端側にGFPを融合したpLVSIN-Nと,細胞構造標識試薬 CellLight ER-RFP (小胞体標識) あるいはGolgi-RFP (ゴルジ体標識) をHAC15に導入した.GFP融合CALN1の発現パターンは,小胞体と一致していることがわかった.CALN1が小胞体に局在することがわかり,さらに,小胞体はCa2+の細胞内貯蔵器官であるため,CALN1高発現したHAC15における小胞体Ca2+貯蔵量を解析した.小胞体内Ca2+濃度指示薬となるR-CEPIA1erを用いると,CALN1を導入したHAC15において,小胞体Ca2+濃度はコントロールに比較し有意に高値であった.2.アルドステロン産生腺腫における小胞体鍵分子の探索昨年度に行った網羅的遺伝子発現解析をさらに解析し,アルドステロン産生腺腫に高発現する小胞体関連分子をXを同定した.免疫組織化学による解析から,Xはアルドステロン産生腺腫に高発現していることがわかった.
1: 当初の計画以上に進展している
本研究における当初の計画では,試験④CALN1細胞内局在の検討,および,試験⑤In vitroでのCALN1遺伝子発現操作による機能解析を予定していた.試験④については,上述のように,副腎皮質細胞においてCALN1は小胞体に局在することがわかり,さらに,CALN1が高発現している細胞では,小胞体Ca2+貯蔵量が増えていることも同定できた.試験⑤については,レンチウイルスを用いてCALN1遺伝子操作を行い,CALN1過剰発現するとアルドステロン合成が促進し,CALN1を抑制するとアルドステロン合成が低下することを明らかにできた.さらに,当初は予定していなかったが,昨年度に行った網羅的遺伝子発現調節から,アルドステロン産生腺腫に高発現する小胞体関連因子を同定し,今後,更なる解析を行っていく予定である.新たな小胞体か連因子の同定は,当初予定しておらず,本研究は,当初の計画以上に進展していると考える.
試験⑥ 高アルドステロン血症ラットモデルの作製低ナトリウム食で飼育したSplague-Dawley ratは,レニン・アンギオテンシンII依存性の高アルドステロン血症を示す (研究業績7).また,Splague-Dawley ratに腎動脈狭窄を人工的に作成,あるいは,アルドステロン持続注入したラットに対し,高ナトリウム食を負荷することで,レニン・アンギオテンシンII依存性高アルドステロン血症を呈する高血圧発症ラットを作成することができる.標的因子に関わる化学物質の投与などを行い表現型に与える影響を検討する.試験⑦ 作製した動物モデルの表現型解析作製した動物モデルの血圧,アルドステロン濃度を測定する.摘出した副腎組織におけるCYP11B2発現を免疫組織化学染色により評価する.副腎皮質球状帯をDAB2抗体で染色することにより,新規に同定した因子やシグナル伝達が副腎皮質球状帯の成長に与える影響も検証する.試験⑧ 新規に同定した小胞体関連因子Xのin vitroでの機能解析レンチウイルスを用いて,XをHAC15に過剰発現あるいは発現抑制し,アルドステロン合成に与える影響を検討する.さらに,アルドステロン合成の分子機構についても解析を行っていく.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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