研究実績の概要 |
本研究の目的はゲノムワイド関連解析(GWAS)の成果を活用した新しいゲノム創薬手法を用いて同定された新規2型糖尿病治療薬候補(KIF11阻害薬、GSK3B阻害薬、AP-1阻害薬)を2型糖尿病モデルマウスに投与し、これらの薬剤のin vivoでの耐糖能改善効果を検証するものである。2019年度は肥満2型糖尿病モデルであるdb/dbマウスにおけるKIF11阻害薬投与効果の詳細な機序について検討した。インスリン負荷テストの結果KIF11阻害薬投与群ではインスリン抵抗性が改善していること、また、ピルビン酸負荷試験の結果KIF11阻害薬1投与により肝臓での糖新生が抑制されていることが示された。さらに詳細な分子機序を解明するために、KIF11阻害薬投与db/dbマウスの肝臓よりRNAを抽出しマイクロアレイ解析を行った。KIF11阻害薬投与db/dbマウスの肝臓での遺伝子発現プロファイルをコントロール(vehicle 投与群)と比較したところ、355個の遺伝子発現レベルに差が観察された(t-test, P<0.05 かつ 発現量 > 1.5倍あるいは < 0.67倍)。さらに、Gene set enrichment analysis (GSEA)解析を行ったところ、治療群とコントロール群の間に差を認める複数の遺伝子群(mitotic spindle, notch signaling, beta catenin signaling)が同定された(FDR q < 0.05)。 これまでの一連の検討により、新しいゲノム創薬手法を用いて同定された新規2型糖尿病治療薬候補であるKIF11阻害薬は、コントロールマウスの血糖値には影響を与えないが、肥満2型糖尿病モデルマウスにおいて耐糖能改善効果持つことが示された。このことから、我々が開発した新しいゲノム創薬手法の有用性が示唆された。
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