研究課題
破骨細胞分化の過程では、M-CSFやRANKLなどのシグナルによって細胞増殖・融合・巨細胞化・活性化といった劇的な変化が認められる。その根底には、転写因子 NFATc1を中心とした転写因子複合体による、様々な下流遺伝子のそれぞれの発現時期に合わせた巧妙な発現調節機構が存在する可能性が考えられるが、未だ明ら かでない部分が多い。これまでに、Tandem affinity purificationとLC-MS/MSを組み合せてNFATc1結合分子群の解析から、WHSC1との機能的複合体の可能性を明らかにしてきた。この分子はヒストンH3K36のtri-methylを制御することが明らかとされており、GERMLINE変異における疾患関連変異から、Wolf-Hirschhorn syndromeの原因遺伝子であることが知られており、この遺伝子変異により軟骨や骨の異形成がもたらされることが分かった。今年度の解析として、NFATC1の結合分子群のインタラクトーム解析を行い、エピジェネティクス制御分子群や、クロマチン制御や遺伝子発現制御に関わる分子群のネットワークが集積していることが明らかとなった。また、NFATc1転写因子自体の翻訳後タンパク修飾解析を実施した結果、リン酸化やアセチル化、メチル化など、新規のNFATc1化学修飾を検出した。これらの機能解析として、エピジェネティックな遺伝子制御機構を介した破骨細胞機能制御の新たな役割に注目して解析を進めている。これらの実績は、様々な上流シグナルに応じた転写因子複合体形成を介して機能の異なる多様なNFATc1下流遺伝子発現制御により、破骨細胞の複雑な分化過程が制御されている可能性が示唆しており、今後の研究の発展につながる大きな成果である。
2: おおむね順調に進展している
転写因子NFATc1の複合体解析群のバイオインフォマティクス解析を用いたインタラクトーム解析から、クロマチン制御や遺伝子発現制御に関わる分子群のネットワークが集積していることを明らかとなった。加えて、NFATc1の新しいpost-translational protein modificationとして、リン酸化やメチル化の同定にも成功しており、おおむね順調に成功している。
今後の方針として、siRNAやCRISPR/Cas9を用いて、NFATc1複合体の様式をdisruptionさせることで、エピジェネティクス制御を介した破骨細胞機能調節の役割を明らかにする。また、次世代型シークエンサーを用いて前破骨細胞系細胞株RAW264.7におけるRANKL刺激後の遺伝子変化をゲノムワイドに解析していく予定である。このトランスクリプトーム解析では、これまで破骨細胞分化との関連性が明らかでないprotein-coding genesや、micro-arrayなどでは検出できない microRNAやlincRNAなどのnon-coding RNAなどを含めて、どのような遺伝子群がRANKL依存性に発現制御を受けるかを調べる予定である。可能であれば、これらの 新規破骨細胞分化関連遺伝子について、RAW264.7細胞を用いて、破骨細胞分化におけるタンパクレベルでの発現を検討する。さらに、CRISPR/Cas9システムを用 いて、WHSC1やNFATc1をノックアウトし、RANKL依存的シグナルで刺激し、RNA-seqによる下流遺伝子群のプロファイルを比較解析することで、骨ネットワークの 特定の機能のなかでも、どの機能制御に関わっているかを明らかにする方策である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 3件)
J Atheroscler Thromb.
巻: 26 ページ: -
https://doi.org/10.5551/jat.45799
J Hum Hypertens.
巻: 33 ページ: 210-217
10.1038/s41371-019-0167-1
Diabetes Ther.
巻: 10 ページ: 311-321
10.1007/s13300-018-0555-5. Epub 2018 Dec 21.
Prostaglandins Other Lipid Mediat.
巻: 134 ページ: 16-23
10.1016/j.prostaglandins.2017.11.002
J Clin Med Res.
巻: 10 ページ: 154-157
10.14740/jocmr3270w
Endocr J.
巻: 65 ページ: 193-202
10.1507/endocrj.EJ17-0331
Intern Med.
巻: 57 ページ: 2165-2168
10.2169/internalmedicine.9749-17
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
巻: 115 ページ: 8370-8375
http://doi.org/10.1073/pnas.1804243115
J Atheroscler Thromb
巻: 25 ページ: 621-633
https://doi.org/10.5551/jat.42291
Toho Journal of Medicine.
巻: 4 ページ: 74-80