研究課題/領域番号 |
17K09895
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研究機関 | (財)冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
竹下 章 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (20322646)
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研究分担者 |
竹内 靖博 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (50202164)
山田 正三 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (80260131)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クッシング病 |
研究実績の概要 |
クッシング病の原因であるACTH産生下垂体腺腫の約3分の1に、脱ユビキチン化酵素USP8の体細胞変異が認められることが2015年に報告された。変異体がEGFRの脱ユビキチン化を促進し、EGFシグナルを介してPOMC発現を誘導することがin vitroの解析で想定されたが、ACTH産生腺腫60例を用いた我々のin vivoの解析(Eur J Endocrinol. 174:213, 2016)では変異と腫瘍のEGFR発現に関連性は認められず、ACTH産生腺腫におけるUSP8の標的蛋白は未だ明らかでない。 クッシング病のACTH産生下垂体腺腫のうちUSP8変異陽性でACTHの前駆体であるPOMC遺伝子の発現が高い腫瘍3例と、USP8変異陰性でPOMC遺伝子発現が低い腫瘍3例を選び、DNAマイクロアレイを用いて両群での遺伝子発現プロファイルを比較した。続いて両群間で発現プロファイルの異なる遺伝子を選び、50例の腫瘍RNAを用いてqPCRを行い検証した。 DNAマイクロアレイにより両群間で差を認めた遺伝子のうち28遺伝子に関してqPCRを施行した。28遺伝子の中にはUSP8変異陽性で多く発現するPKA-MAPK系、概日リズム関連遺伝子が含まれていた。POMC遺伝子発現を目的変数として前進法によるステップワイズ重回帰分析を施行したところ2つの遺伝子が説明変数として選ばれた(R=0.795, p<0.0001)。うち正常下垂体には発現のみられない遺伝子Xに着目し、クッシング病の下垂体腺腫で免疫染色にを行ったところ、約60%の症例でX遺伝子の蛋白発現が確認され、POMC遺伝子発現量と相関が認められた。 現在マウスACTH産生下垂体腫瘍細胞株(AtT-20細胞)にX遺伝子を強制発現しPOMC遺伝子発現との関連性を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスACTH産生下垂体腫瘍細胞株(AtT-20細胞)は通常の遺伝子導入法(リポフェクチン法やカルシウム法)では効率が低く、特定の装置を用いた電気穿孔法は必要であり時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
DNAマイクロアレイ解析によりX遺伝子のほかにもUSP8変異陽性のACTH 産生腺腫に高発現する遺伝子群を多数同定した。これら遺伝子には POMC のほか、PKA-MAPK系、概日リズム関連遺伝子を含んでいる。一方、USP8変異陰性で腫瘍サイズの大きい 難治性群に高発現しcell cycle に関連する遺伝子を同定している。 今後はこれらの遺伝子をマウスACTH産生下垂体腫瘍細胞株(AtT-20細胞)に高発現させ、クッシング病におけるACTH概日リズムの消失やACTH産生腺腫におけるシグナル伝達ネットワーク機構異常を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
6円と端数が発生した。
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