研究課題
心房性・脳性ナトリウム利尿ペプチド(ANP・BNP)は、心臓から産生・分泌される循環調節ホルモンであり、ともに一回膜貫通型受容体であるGuanylyl Cyclase-A (GC-A) に結合することで利尿・血管拡張作用等を発揮する。2017年度の検討で、我々はGC-Aが骨格筋における血管内皮・血管平滑筋細胞や脂肪組織に豊富に発現していること、GC-A遺伝子完全欠損マウス(GC-A-KO)は、野生型マウス(WT)に比べて、普通食投与下で体重が重いことを見出した。2018年度は、内因性ANP・BNPが摂食行動やエネルギー代謝に及ぼす作用について知るため、GC-A-KOの表現型を小動物総合モニタリングシステムを用いて詳しく調べた。結果、GC-A-KOの摂食量はWTに比べ有意に多く、酸素消費量・熱産生量はWTより有意に少ないことが分かった。またWT・GC-A-KOにインスリン負荷試験・糖負荷試験を行ったところ、GC-A-KOは普通食投与下においてインスリン抵抗性を示し、これはWTとの間でpair feedingを行った後も認めた。Light Cyclerを用いた定量PCR法による解析では、WATにおける脂肪合成・脂肪酸酸化関連遺伝子発現レベルにはWT・GC-A-KO間で差を認めず、BATにおいてもエネルギー代謝関連遺伝子発現レベルには両群間で差を認めなかった。以上のことから、GC-A-KOは過食・酸素消費量および熱産生量低下・インスリン抵抗性を示すメタボリックシンドロームモデルマウスであり、内因性ANP・BNP は摂食抑制・エネルギー代謝亢進作用を有することが示唆された。次年度はANP・BNPの作用発現部位について、特に血管に注目して調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画どおり、内因性ANP・BNPが摂食行動やエネルギー代謝に及ぼす作用について知る為、GC-A-KOマウスを用いた検討を行った結果、GC-A-KOは過食・酸素消費量および熱産生量低下・インスリン抵抗性を示すメタボリックシンドロームモデルマウスであり、内因性ANP・BNP は摂食抑制・エネルギー代謝亢進作用を有することが分かったから。
2018年度までの検討で、内因性ANP・BNP は摂食抑制・エネルギー代謝亢進作用を有することが分かったが、これらの作用が生体内のどの細胞・組織におけるGC-A受容体を介したものかは不明である。そこで今後の研究の推進方策としては、Cre-loxPシステムを用いて作製した細胞特異的GC-A欠損マウスを用いて、ANP・BNP の代謝調節作用におけるsite of actionを明らかにする。
2018年度に取得した研究データは、国立循環器病研究センター研究所の備品である「小動物総合モニタリングシステム」を使って得たものが多かった。また、2019年度初頭に当センターが移転するため、マウスを飼育できない期間が生じた。以上の理由により、消耗品費およびマウス飼育費が当初の予定よりも少額となり、次年度使用額が生じた。2019年度の当該助成金使用計画は、遺伝子発現検討に用いる試薬代・マウス飼育費用が消耗品費の中心となり、旅費は国内学会参加に伴う費用に用いる予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Circulation Research
巻: 122 ページ: 742-751
https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.117.312624
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 2093
10.1038/s41598-018-20469-z.
Anesthesiology
巻: 129 ページ: 296-310
10.1097/ALN.0000000000002214.
Biochemical Pharmacology
巻: 154 ページ: 136-147
10.1016/j.bcp.2018.04.012.
http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/biochemistry/