研究課題/領域番号 |
17K09898
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小原 直 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70422178)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 造血支持細胞 / 分化障害 / Nestin / 赤芽球 |
研究実績の概要 |
(背景)近年、神経幹細胞マーカーの一つであるNestinを発現し,神経外胚葉関連と考えられる細胞が骨髄内に存在し、これが造血幹細胞にとって重要な微小環境細胞である可能性が示されている。しかし、Nestin発現細胞の造血支持にかかわる分子基盤については不明な点が多い。一方、現在までに神経系細胞の生存・分化にNotchシグナルが必須であることがすでに報告されている。また、造血支持細胞内におけるNotchシグナル活性の低下が、骨髄増殖性疾患様病態を誘導するとの報告もある。Nestin発現細胞特異的にNotchシグナルを欠落するマウスを作製し、Notchシグナルを中心に骨髄中のNestin発現造血支持細胞における分子基盤を解析した。 (方法)タモキフェン(TM)投与下でNestin発現細胞特異的にGFPおよびCre遺伝子を発現するNestin-CreERT2/GFPマウスとRbpj f/f マウスを交配させ、Nestin発現細胞でGFPで発現をトレースできてかつRbpj遺伝子を欠損するマウスを作製した。このマウスに対し、タモキシフェンを投与し、解析した。CKOマウスはTM投与後に脾腫及び軽度の貧血を呈していた。骨髄中のGFP陽性細胞は0.1-0.5%と少数であった。 フローサイトおよび免疫染色ではCKOマウスでは骨髄中のCD71+Ter119+を示す成熟赤芽球が減少し、逆にCD71+Ter119-の比較的未分化な赤芽球が増加していた。脾臓においては逆にCKOにおいて赤血球造血が亢進していた。野生型マウス骨髄をノックアウトマウスに移植したところ、同様に成熟赤芽球が減少し、赤血球系の分化障害が確認された。このことから、ノックアウトマウスの赤芽球分化障害のフェノタイプは造血支持細胞の異常によって引き起こされたものであることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの交配についてはおおむね順調であり、解析に十分なマウスを得ることができている。ノックアウトマウスのフェノタイプである脾腫と貧血、赤芽球の異常については再現性をもって解析できており、問題なく進捗していると考えている。 移植実験については野生型骨髄をノックアウトに、ノックアウトマウス骨髄を野生型に移植する両面の実験が終了しており、再現性をもって確認できている。 実験環境については、マウス飼育。フローサイトメトリー、PCR、免疫染色など滞りなく行うことができる環境となっている。 今後は網羅的な遺伝子発現解析行うが、よい結果が得られれば速やかに論文作成準備に入れると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウスにおいて、造血支持細胞および赤芽球島を形成するマクロファージの遺伝子発現変化をRNAseqを用いて網羅的に解析し、関与しているケモカインなどの候補を探索する。 ノックアウトマウスの鉄代謝関連遺伝子発現の解析を行う。 マクロファージによる赤芽球島の再構成実験をおこなう。 論文投稿準備を行う。
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