研究課題
【背景】近年、神経幹細胞マーカーの一つであるNestinを発現し、神経外胚葉関連と考えられる細胞が存在していることが明らかとなっている。これらの細胞は造血幹細胞にとって重要な微小環境を形成している可能性が示されているが、造血支持にかかわる分子基盤については不明な点が多い。一方、現在までに神経細胞の生存・分化にNotchシグナルが必須であることがすでに報告されている。また、造血支持細胞におけるNotchシグナル活性の低下が骨髄増殖性疾患様の病態を誘導するとの報告もあり、造血支持細胞の異常が造血疾患発症に重要であるとの認識がなされつつある。本研究では、Nestin発現細胞特異的にNotchシグナルを欠落するマウスを作製し、Notchシグナルを中心に骨髄中のNestin発現造血支持細胞における分子基盤を解析している。【方法】タモキシフェン(TM)投与下でNestin発現細胞特異的にGFPおよびCre遺伝子を発現するNestin-CreERT2/GFPマウスとRBPj flox/floxマウスを交配させ、Nestin発現細胞でGFP発現をトレースできてかつRBPj遺伝子を欠損するマウス(CKOマウス)を作製した。このマウスに対し、タモキシフェン4-8週を投与し、造血能や造血関連遺伝子発現などを解析した。【結果】骨髄中のGFP陽性細胞は0.1-0.5%と極めて少数であった。CKOマウスはTM投与後に脾腫および貧血を示した。CKOマウスではCD71+Ter119+を示す成熟赤芽球が減少し、逆に比較未熟な赤芽球が増加しており、赤血球系の造血障害が確認できた。脾臓においては逆にCKOマウスで造血が亢進していた。コロニーアッセイやサイトカイン・ケモカインの解析からCKOマウスではNestin発現細胞が産生するIL6を介して赤芽球島の形成が低下していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
マウス交配は順調であり、解析に十分なマウスを得ている。CKOマウスのフェノタイプである脾腫と貧血・赤芽球の異常・組織所見などの解析結果についてはすべて再現性をもって解析できている。造血支持細胞・マクロファージなどの網羅的遺伝子解析も終了している。実験環境についてはマウス肥育、フローサイトメトリー、PCR、免疫染色、RNAseqなど滞りなく行う環境が整備されている。これまでの解析データをまとめて論文を作成し、Stem Cellsに投稿し、リバイスを経て最終的に受理された。
これまでの実験でCKOマウスでは骨髄の造血不全フェノタイプが脾臓摘出後に改善することが明らかとなり、今後、脾臓と骨髄の造血支持細胞の違いについて、網羅的遺伝子解析・サイトカインアレイなどを中心に解析を行う予定である。また、これまでの我々の解析ではNestin-Creマウスでは胎児期後期より貧血を呈することが明らかとなっており、今後このマウスを用いた胎児解析を行う予定である。
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