研究課題/領域番号 |
17K09903
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
倉重 隆明 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00791633)
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研究分担者 |
柴山 浩彦 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (60346202)
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アナモルシン / 貧血 / コンディショナルノックアウトマウス / 赤血球分化 / 鉄・硫黄クラスター / アポトーシス |
研究実績の概要 |
前年は適時にAMを欠損させ赤血球造血への影響を調べるコンディショナルノックアウトマウスモデルを確立し、AMの欠損により、赤血球分化が阻害されアポトーシスが亢進し貧血を呈することを見出した。本年は主にAMの細胞内での作用機序について分子生物学的な検討を行った。 細胞内鉄制御においてIRP1は、鉄硫黄クラスターを保持しアコニターゼ活性を持ち、鉄欠乏時はIREへの結合能が増強しTf受容体の発現を誘導する。AMが鉄硫黄クラスターの生合成や細胞内鉄代謝、自由鉄の制御への関与を検討をするため、AMKOマウスとWTのそれぞれの胎仔肝から培養細胞を作製した。その結果、AM欠損株ではアコニターゼ活性が低下し、IRP1のIREへの結合能の増強が認められず、Tf受容体の誘導も認められなかった。また、細胞内の自由鉄はAM欠損細胞では増加し、ROSの増加やアポトーシスの増加も見出した。これらのメカニズムに関与する因子を同定するためさらなる検討を行った。AMに結合する因子として以前当科ではPICOTを見出していた。培養細胞にAMとPICOTを共発現する系では、酸化ストレスによる細胞内鉄過剰状態では結合が増強、逆に鉄欠乏状態にすると結合の減弱を見出した。昨年度作製したレトロウイルスベクターを用いて、AMとPICOTの結合に対し上記モチーフ配列の関与について検討を行ない、metyl-transferaseモチーフ配列欠失によりPICOTとの結合が消失することを見出した。 以上から、AMが細胞内における鉄制御に深く関与し、アポトーシスなどへ関与しているメカニズムを解明することができた。 Mx-Cre Tg-AM Flox・Flox マウスにpIpCを投与することでAMを欠損させた骨髄細胞の野生型マウスへの移植モデルについても現在検討中であり、本年得られた知見を検討する準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中間の年であるが、前年コンディショナルノックアウトマウスで得られた知見を、細胞内での作用機序についてフォーカスし解析を進めることができた。これについては当初予想していたよりも大きく進展していると考えられる。 一方、Mx-Cre Tg-AM Flox・Flox マウスにpIpCを投与することでAMを欠損させた骨髄細胞の野生型マウスへの移植モデルについても現在検討を行っており、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
該当年度の研究により、細胞におけるAMの鉄硫黄クラスター生合成など鉄制御への重要性は示すことができたが、従来の抗アポトーシス分子と類似の構造を持たないためAMがどのような分子機序で作用しているかは依然不明である。本年示したPICOT以外の直接結合する因子やカスケードの因子などについて引き続き網羅的な遺伝子発現の変化などを追っていく予定である。 また、AMを欠損させた骨髄細胞の移植モデルについても検討を進め、これらのモデルでの造血再構築などの表現型の詳細な解析や、その際に今まで明らかにしてきた因子の変化などを確認していく。 これらのモデルにおいて明らかとなった因子について、当科で保存されている貧血を呈する臨床検体での検討を行い、ヒト貧血疾患におけるAMの関与についても明らかにし、新たな診断や治療への可能性を探るものである。
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