研究実績の概要 |
【はじめに】好酸球増加症は好酸球の組織障害性顆粒と組織への直接浸潤により、様々な臓器障害を引き起こす。好酸球増多症候群 (hypereosinophilic syndrome, HES) は現代の診断技術で原因の特定ができない好酸球増加症の総称であり、臨床診断マーカーの不足が問題である。またHESにはチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブが有効な症例が存在するがその分子メカニズムは解明されていない。本研究は末梢血で測定可能なHESの診断性および治療反応性予測のバイオマーカーの開発を試みた。 【対象および方法】様々な原因の好酸球増多症患者において好酸球性白血病の診断に必要なFIP1L1-PDGFRA遺伝子解析を行い、解析後に残った末梢血の残余検体を凍結保存したものを使用した。次のように多種類の遺伝子発現量を同時に測定可能なPCR アレイ法と少量のmRNA量でも検出可能なデジタルPCR 法を組み合わせて解析を行った。 ステップ1.mRNAが豊富な検体に対しPCRアレイ法による診断マルチバイオマーカー候補遺伝子のスクリーニングを行う。さらにチロシンキナーゼ遺伝子群を含む約300遺伝子の発現量解析を行い病態に関連して変動する遺伝子を探索する。 ステップ2.上記によって得られた候補遺伝子をデジタルPCR 法により測定し検証する。 【結果および考察】PCRアレイ法によりイマチニブが有効で好酸球数が正常化した患者3名ではイマチニブが標的とするPDGFRA, PDGFRB, DDR1/ABL1/ABL2のいずれかあるいは複数の発現量が他のイマチニブ不応性疾患に比べて亢進していることがわかった。つまりこれらの遺伝子発現量はイマチニブ反応性のバイオマーカーになり得る可能性がある。さらにデジタルPCR法でこれら複数の遺伝子発現量を同時に測定することにより病態に応じた遺伝子発現パターンを認識できると考えている。
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