研究課題/領域番号 |
17K09909
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中島 秀明 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30217723)
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研究分担者 |
田村 智彦 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (50285144)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | OGT / O-GlcNAc修飾 / 造血幹細胞 / 血球分化 |
研究実績の概要 |
O結合型β-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)転位酵素(OGT)は、タンパク質のセリン・スレオニン残基にO-GlcNAc基を付加する酵素であり、蛋白の機能調節やエピゲノム修飾に重要である。O-GlcNAc修飾はリン酸化シグナルとも密接な関係があり、その異常は癌や糖尿病などを引き起こす。我々はH26-27年度挑戦的萌芽研究においてOGTの造血系における機能解析を施行し、OGTによるO-GlcNAc修飾は胎児肝の造血幹細胞(HSC)の自己複製能・増殖能に重要であり、その欠失はHSC機能喪失とグローバルな血球分化異常をきたすことを明らかにした。本研究はこれを発展させ、O-GlcNAc修飾異常による造血異常の分子基盤を統合的に解明すると同時に、造血器腫瘍・幹細胞老化という様々な疾患状態とO-GlcNAc修飾異常・HSC機能異常との関わりを明らかにするために行った。 H30年度は、OGT欠失がHSCの幹細胞機能障害を引き起こす分子メカニズムを細胞内代謝の観点から解析した。その結果、OGT欠失に伴ってHSCの活性酸素(ROS)が上昇し、細胞のアポトーシスが亢進、静止状態が失われることを見いだした。さらに、これらの現象はミトコンドリア代謝の異常によって引き起こされることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は、計画どおりOGT欠失による造血幹細胞機能喪失の分子メカニズム解析を施行した。研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は予定通り下記の計画を進める予定である。 1)O-GlcNAc化機能異常によるHSC機能異常の分子メカニズム:H30年度に引き続き、O-GlcNAc化制御異常によるHSC機能異常の分子メカニズムについて解析を進める。具体的にはOGT欠失によりミトコンドリア機能異常が引き起こされる分子メカニズムについて、ミトコンドリア代謝の観点から詳細を明らかにする。 2)造血器腫瘍とO-GlcNAc化制御異常の関連:白血病・MDS幹細胞機能とO-GlcNAc制御異常の関連を明らかにしていく。白血病モデルマウスについては、OGT-floxマウスの骨髄細胞に各種白血病遺伝子を導入して白血病細胞を樹立、その後OGT遺伝子をflox-outして白血病細胞の白血病発症能をin vivo ならびにin vitroで明らかにする。
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