研究課題
O結合型β-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)転位酵素(OGT)は、タンパク質のセリン・スレオニン残基にO-GlcNAc基を付加する酵素であり、蛋白の機能調節やエピゲノム修飾に重要である。O-GlcNAc修飾はリン酸化シグナルとも密接な関係があり、その異常は癌や糖尿病などを引き起こす。我々はH26-27年度挑戦的萌芽研究においてOGTの造血系における機能解析を施行し、OGTによるO-GlcNAc修飾は胎児肝の造血幹細胞(HSC)の自己複製能・増殖能に重要であり、その欠失はHSC機能喪失とグローバルな血球分化異常をきたすことを明らかにした。本研究はこれを発展させ、O-GlcNAc修飾異常による造血異常の分子基盤を統合的に解明すると同時に、造血器腫瘍・幹細胞老化という様々な疾患状態とO-GlcNAc修飾異常・HSC機能異常との関わりを明らかにするために行った。H31/R1年度は、引き続きOGT欠失がHSCの幹細胞機能障害を引き起こす分子メカニズムを細胞内代謝の観点から解析した。昨年度の研究で、OGT欠失がHSCの活性酸素(ROS)上昇、アポトーシス亢進、静止状態減少を引き起こすことを明らかにしたが、本年度の研究でこれらはミトコンドリア制御の異常によるものであることを突き止めた。具体的には、OGT欠失により異常ミトコンドリアが蓄積することを、ミトコンドリア量、ミトコンドリア膜電位、細胞外フラックスアナライザーの解析から明らかにし、さらにこれらがマイトファジー制御の異常で生じることを免疫染色で確認した。さらにそのメカニズムを明らかにするために、RNA sequenceによる遺伝子発現解析を行った結果、マイトファジーの主要な制御分子であるPINK1の発現が低下していることが明らかとなった。
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