研究課題/領域番号 |
17K09911
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
北島 健二 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (10346132)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ES細胞 / 造血幹細胞 / インターフェロン |
研究実績の概要 |
われわれは、マウス胚性幹細胞 (Embryonic Stem Cells; ESCs) から血液細胞への試験管内分化 誘導において、インターフェロン-γ (IFN-γ) により、Lineage 陰性 Sca-1 陽性 c-Kit 陽性 (LSK) 血液細胞が顕著に増加することを発見した。マウス胎仔において、IFN-γは、造血幹細胞(Hematopoietic Stem Cells;HSCs) 発生に重要な分子である。 そこで、IFN-γを用いたマウス ESCs から HSCs への新規分化誘導システムの開発に挑んでいる。 マウスESCsをOP9ストロマ細胞と共培養すると、造血性血管内皮細胞(Hemogenic Endothelial Cells; HECs)に分化する。このHECsをIL-6・SCF・IFN-γ存在下でOP9細胞と共培養して得られたLSK細胞の長期骨髄再建能を調べるために、半致死量放射線照射した免疫不全マウス(NSG-CD45.1マウス)に移植した。しかしながら、移植後1ヶ月の時点での生着は、認められなかった。 次に、ESCs由来のHECs(Tie-2陽性c-Kit陽性CD45陰性)は、IFN-γ存在下で培養すると、Sca-1を発現することを見出した。造血幹細胞が発生するAGM領域では、Sca-1陽性CD34陽性HECsから造血幹細胞が発生するとされている。一方、ESCsを6日間OP9細胞と共培養して得られるHECsは、CD34陰性が大部分であった。 以上の結果から、AGM領域のHECsとESCs由来のHECsは、少なくともCD34の発現が異なっており、ESCsからは、AGM領域のHECsとは異なるHECsが誘導されている可能性が高いものと思われた。そこで、現在、ESCsからCD34陽性HECsを分化誘導する手段の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IFN-γにより誘導されたLSK細胞をマウスに移植しても、生着しなかった。そこで、現在の培養条件を改良する必要が出てきた。また、マウス胎仔AGM領域のHECsは、CD34陽性であるが、マウスESCsをOP9細胞と6日間共培養して得られたHECsは、CD34陰性が大部分(90%)であり、CD34陽性細胞は僅か(10%程度)であった。そこで、マウスESCsからCD34陽性のHECsを分化誘導するための培養条件の改良も必要となり、予定された研究計画が若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス胎仔AGM領域のHECsからHSCsへの分化は、恒常的活性化型Aktを強制発現させたAGM領域由来の血管内皮細胞と共培養を行うと、顕著に促進されることがわかっている。また、AGM領域では、Sca-1陽性のHECsからHSCsが発生する。マウスESC由来のHECsも、IFN-γによりSca-1陽性となることが判明している。そこで、このマウスESC由来のSca-1陽性HECsを、恒常的活性化型Aktを強制発現させたAGM領域由来の血管内皮細胞と共培養し、得られる血液細胞の解析を行う。 また、予備的成果であるが、マウスESCsをOP9細胞と9日間共培養すると、CD34陽性のHECsが多く認められることが判明した。そこで、今後は、このCD34陽性HECsが、IFN-γによりSca-1陽性になるのか否か、および、AGM領域由来の血管内皮細胞との共培養により、HECsを分化誘導できるのか否か、の解析を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、繰り返し行う予定であったマウス移植実験を、一回目のマウス移植実験の不成功により見合わせたため、次年度使用額が生じた。この補助金は、次年度、ストロマ細胞の検討などを行った後に、マウス移植実験のために使用する予定である。
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