研究実績の概要 |
多発性骨髄腫(Multiple Myeloma : MM)は全身に多様な臨床的特徴を示す造血器系腫瘍であるが、近年、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬など多彩なターゲット治療薬の開発により患者の長期予後は改善されてきた。一方で、MMの主徴候である骨溶解については未だ有効な治療法がなく、高齢者層では知覚障害や運動麻痺など骨関連事象を生じている。MMの骨破壊病変は骨髄の破骨細胞抑制因子OPGと破骨細胞活性化因子RANKLの平衡破綻と共に間質細胞や活性化T 細胞を介したOsteoclast activating factors (OAF)の刺激や、M-CSFの作用が破骨細胞分化の機序とされてきた。しかし、M-CSF受容体CSF-1Rのセカンドリガンドとして新規に発見されたIL-34(Lin et al. Science 2008)は、M-CSFと比較し著しい破骨細胞分化誘導活性を有することが、我々の先行研究で示された。本研究では、IL-34の破骨細胞誘導能の検証(Ⅰ)とOAFとの関与につき探索(Ⅱ)を行った。 Ⅰ.マウスMM細胞(MOPC315.BM)について、IL34-knock down(IL-34KD)株を作製し、マウスMMモデルに供して、頭蓋骨、脊椎、大腿骨の骨密度(μCT)および破骨細胞数評価(TRAP染色)を行ったところ、野生株と比較し骨密度の低下や破骨細胞増加を認めなかった。また培養下でIL-34KD株はマウス単球細胞の破骨細胞分化能を失った。 Ⅱ.MOPC315.BMとMM患者の骨髄サンプルより分離したMM細胞(CD138+,CD19-)にOAF(IL-6, TNFα, IL-7, MIP1α)を添加した結果、IL-34が顕著に誘導された(qPCR, ELISA)。これより骨髄ニッチ内でOAFによりMM細胞がIL-34誘導を受け、破骨細胞分化に寄与する事が示唆される。
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