研究課題
本研究は血液がんである急性骨髄性白血病(AML)を対象としている。腫瘍細胞(白血病細胞)と骨髄微小環境(骨髄ストローマ細胞)との相互作用を分子レベルで解明することで治療標的を同定し、最終的には難治性白血病を克服することを目的としている。本研究計画時において、AMLでは微小環境との相互作用という視点では目立った研究報告がなされていなかった。申請者グループは、発生・分化・増殖など細胞の運命決定に重要な役割を果たすNOTCHシグナルについて、造血器を中心に研究を行ってきた。本研究では骨髄ストローマ細胞におけるNOTCHシグナル減弱がAMLに与える影響について解析を行っている。平成29年度はヒト研究のためにAML患者骨髄からの検体収集をおこなっている。現在検体収集は順調に行えており、解析準備をしている。一方マウス研究では骨髄ストローマ細胞でのNOTCHシグナル抑制がAML発症を支持する機構の解析を行っている。骨髄ストローマ細胞でのNOTCHシグナルの減弱は何らかの炎症状態を励起している可能性が高く、NOTCHシグナルを欠損させた骨髄ストローマ細胞とAML細胞を共培養すると、AML細胞の増殖能が亢進する事を確認した。次に様々な遺伝子導入により作製したマウス白血病細胞を野生型マウスもしくは骨髄ストローマ細胞でNOTCHシグナルが抑制されたホストマウスに移植し、白血病発症の有無等につき観察を継続している。今後この白血病マウスモデルを用いて、NOTCHシグナル(Rbpjk)ノックアウトマウス骨髄ストローマ細胞がAML細胞を支持する候補分子やサイトカインなどを同定することを計画している。
3: やや遅れている
ノックアウトマウスの繁殖が順調にいかず、結果として白血病マウスモデルの作成が遅れている。
本研究では白血病マウスモデルの解析とヒト検体の解析を同時にすすめること予定していた。現在マウス研究が遅れていいるため、ヒト検体の収集は継続し解析を一時中断し、白血病マウスモデルの解析に集中する。本研究では急性骨髄性白血病細胞と骨髄微小環境(骨髄ストローマ細胞)との相互作用の解明を目的としている。骨髄微小環境として骨髄ストローマ細胞のNOTCHシグナルに注目をした。本年度はNOTCHシグナル(Rbpjk)ノックアウトマウスとMx-Creマウスを交配し、Rbpjk/Mx-Creマウスを作成し、移植ホストマウスとして研究を行っていた。このマウスでは骨髄ストローマ細胞全体でNOTCHシグナルを減弱することになる。骨髄ストローマ細胞は様々な種類があることが報告されており、特定の骨髄ストローマ細胞のみでNOTCHシグナルを減弱させることで、AMLに対する微小環境の相互作用としてより詳細にメカニズムを同定できる可能性がある。Mx-Creマウス以外の骨髄ストローマ細胞に関連するCreマウスとRbpjkノックアクトマウス交配し、骨髄微小環境でのNOTCHシグナルの役割につき解析を継続していく予定である。
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