研究課題
成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型 (HTLV-1)の感染によって引き起こされるCD4陽性T細胞の白血病である。日本のHTLV-1感染者数は約108万人と推定され、年間1100人ほどの感染者がATLを発症する。現在のところ有効な治療薬は開発されていない。プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(Bortezomib)はATL細胞に細胞死を誘導できるため、ボルテゾミブ感受性を決定する細胞因子を同定できれば、より効果的な治療薬を開発できる。本研究では、ボルテゾミブによって誘導される細胞死に関与する蛋白を同定し、その分子機構を明らかにすることを試みている。我々はこれまでに、HTLV-1の癌蛋白Taxに結合するUbiquitin-specific protease 10 (USP10)が、ボルテゾミブによって誘導される細胞死を効果的に抑制することを見出した。さらなる解析により、ボルテゾミブ処理下においてUSP10がアグリソームというユビキチン化蛋白質の凝集体を細胞内に形成すること、USP10を介したアグリソームの形成はボルテゾミブによって誘導される細胞死を抑制することを明らかにした。つまり、USP10は細胞毒性を示すユビキチン化蛋白質を細胞内で凝集させ、細胞死を抑制する機能をもつと考えられた。さらに、ユビキチン結合因子であるp62がUSP10と結合し、USP10によるアグリソームの形成を促進すること、USP10およびp62のノックダウンが、ボルテゾミブによって誘導される細胞死を促進することを見出した。よって、USP10/p62複合体はアグリソームを形成することより、ボルテゾミブ処理下において誘導される細胞死を抑制することが示された。
2: おおむね順調に進展している
ボルテゾミブ処理下において誘導される細胞死をUSP10が抑制することを見出し、その分子機序の一端を明らかにすることができた。
USP10がどのようにしてアグリソーム形成に関与するのかについて、さらなる分子機序の解明を目指す。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
iScience
巻: 9 ページ: 433-450
10.1016/j.isci.2018.11.006