研究課題
成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型の感染によって引き起こされるCD4陽性T細胞の白血病である。プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブは、ATL細胞に細胞死を誘導し、抗白血病作用を示す。我々は、効果的なATL治療法の開発を目指し、ボルテゾミブの感受性を決定する細胞因子の同定を試みた。その結果、Ubiquitin-specific protease 10 (USP10)が、ボルテゾミブによって誘導される細胞死を効果的に抑制することを見出した。USP10は、ボルテゾミブ処理によって細胞内に蓄積するユビキチン化蛋白質を、アグリソーム(細胞質の中心体付近に形成されるユビキチン化蛋白質の凝集体)に凝集させ、ユビキチン化蛋白質の細胞毒性を減弱させた。以上の結果を踏まえ、ユビキチン化蛋白質凝集体の蓄積を特徴とする神経変性疾患にも着目した。パーキンソン病は、脳の黒質のドーパミン神経細胞の細胞死を引き起こす神経変性疾患である。α-シヌクレインはパーキンソン病の原因蛋白質である。パーキンソン病では、α-シヌクレインが脳病変に蓄積し、レビー小体というアグリソーム様凝集体を形成する。神経細胞株をプロテアソーム阻害薬MG-132で処理すると、アグリソームの形成を誘導し、α-シヌクレインとUSP10はアグリソームで共局在した。USP10とα-シヌクレインを細胞に過剰発現させると、α-シヌクレインを含むアグリソームの形成が誘導された。パーキンソン病患者の脳病変部位においても、USP10とα-シヌクレインがレビー小体において共局在した。これらの結果は、USP10がα-シヌクレインのアグリソーム形成を促進し、レビー小体の形成に関与することを示唆する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: -
10.1038/s41598-019-46237-1.
10.1038/s41598-019-47033-7.
新潟医学会雑誌
巻: 133 ページ: 91-96