研究課題/領域番号 |
17K09921
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清井 仁 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90314004)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FLT3 / 阻害剤 / 分子標的治療 / 耐性機構 |
研究実績の概要 |
40種類以上のAML細胞によるPDXモデルを樹立した。FLT3-ITD陽性AML細胞に対してはPDXモデルにおいてもin vitroでの結果と同様に優れた増殖抑制効果を認めた。また、FLT3D835H変異陽性AML細胞に対しても、PDXモデルにおいてFF-10101が従来のFLT3阻害剤と比較して最も優れた抗腫瘍効果を発揮することが確認された。 FLT3-ITD変異陽性ヒト白血病細胞株MOLM14およびMV4;11を用いて、各種FLT3阻害剤に対する耐性細胞株の樹立を試みた。これまでに、quizartinib, gilteritinib, FF-10101耐性株を樹立した。これら耐性株に対して、別のFLT3阻害剤の増殖抑制効果を検討したところ、quizartinib耐性株に対しては、gilteritinib, FF-10101ともに増殖抑制効果を示し、また、gilteritinib耐性株に対しても、quizartinib, FF-10101は増殖抑制効果を示した。一方、FF-10101耐性細胞株に対しては、quizartinib, gilteritinibの増殖抑制効果は減弱していることが確認された。これら耐性機序は、必ずしもFLT3分子における遺伝子変異のみに依存している訳では無いことが明らかになっており、更なる耐性機構の解明を現在進めている。更に、PDXモデルマウスに対し、FLT3阻害剤の継続的投与を行うことによって、in vivoにおけるFLT3阻害剤耐性モデルの構築を進めている。 AML臨床検体に対するFLT3阻害剤の増殖抑制効果をコロニー法を用いて継続的に評価を行った。FLT3遺伝子変異陽性AML細胞に対しては、いずれのFLT3阻害剤も増殖抑制効果を示したが、全てのFLT3阻害剤において増殖抑制効果が認められない1例を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AML臨床検体を用いたPDXモデルの作成は順調に進捗しており、quizartinib, gilteritinib, FF-10101をはじめとする各種FLT3阻害剤の増殖抑制効果や耐性機序の評価も予定通り進行している。新たに、全てのFLT3阻害剤に対して耐性を示す臨床症例を同定したことから、実臨床におけるFLT3阻害剤の一次耐性機構の解明に貢献できることが期待される。 正常造血に対するFLT3阻害剤の影響についても解析が進行しており、必ずしもKITに対する阻害活性のみが骨髄抑制に関与しているわけでなく、赤芽球への造血抑制も重要であることを明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度からのPDXモデルおよび細胞株を用いたFLT3阻害剤耐性に関与する分子機構の解明を進め、耐性変異に対してはFF10101による克服の可能性を検討する。 耐性FLT3遺伝子変異以外の活性化シグナルによる耐性化機構が同定された場合には、それら活性化分子の阻害剤やsiRNAによるノックダウンにより耐性機構の存在を実証し、克服するための併用薬剤を選別する。 変異FLT3陽性細胞が超マイナークローンとして存在する症例の初診時骨髄細胞をNOGマウスに接種し、各FLT3阻害剤の投与によって変異FLT3陽性細胞の生着抑制が可能かを検討する。 DNRなどのアントラサイクリン系薬剤、AraC、Azacitidine、レチノイド、HDAC阻害剤を中心に、FLT3阻害剤との併用効果を、投与順序を考慮しつつPDXモデルで増幅したヒトAML細胞を用いたコロニー法にて検討する。相乗効果が得られた組み合わせと投与方法についてはin vivo PDXモデルで検証するとともに、AML細胞が有する分子病態との関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部のPDXモデルでのAML細胞の増殖に時間を要したために、薬効評価のために用いるNOGマウスの購入数が少なかったこと、及びそれらマウスを用いての解析費用が翌年度に繰り越されることとなった。次年度においては、これらの評価を動じに実施する予定としている。
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