研究課題
平成29年度では、平成26年度に開始した「新世代治療導入後の未治療節外性NK/T細胞リンパ腫 (ENKL)における治療実態把握と予後予測モデル構築を目的とした国内および東アジア多施設共同後方視的調査研究 (NKEA)」Part Aデータセットを用い、以下の検討を行った。最初に、新世代治療群をtraining cohortとし、可溶性IL-2R以外で画像診断情報に依拠しない因子で構成される予後予測モデルの構築を試みたが、可溶性IL-2R単独が最も優れた予後予測因子と判明し目的を達成したため、モデル構築は不要となった。次に、初発限局期鼻ENKLを対象とし、診断後2年以内の原病増悪 (POD24)と診断時病態、イベント後生存との関連を解析し、その結果を日本と同様の新世代治療が実施されている韓国の一施設の患者データセットを用いてvalidationを実施した。その結果、治療レジメンにかかわらず約4分の1の患者でPOD24が発生していた。POD24発生例の予後は不良であり、POD24がunmet medical needsを有する患者の同定に有用であることを明らかにし、国内外の学会で報告し、論文が受理された。並行して、上気道外発生例における新世代治療の適合性についてNKEA Part Aデータセットを用い解析した。その結果、標準治療であるRT-DeVIC療法およびSMILE療法は鼻外ENKLでは臓器機能と全身状態の点から大半の患者で実施困難であることが明らかとなった。この結果を国外学会で報告し、論文作成中である。予定したテーマのうち、残る中枢神経系再発に関する解析を終了しており、現在発表準備中である。東アジアの研究者とENKLに関する情報交換を行い、新規治療法の臨床試験の実行可能性について検討した。ENKLに関する英文総説を執筆した。
2: おおむね順調に進展している
NKEA Part Aデータセットを用いた解析は予定より早く進み、すでにPOD24に関しては論文が受理されている (in press)。その一方で、新世代治療の限界が多く明らかとなり、その克服のためには新たな国際共同研究の計画が望ましく、今年度以降の課題と考えられた。ENKLに関する総説は日本での治療の現状を紹介しており、今年度以降の国際研究に向けての相互理解に役立つと考える。
上気道外発生例、および中枢神経系浸潤に関する解析と結果公表を行い、東アジアでの治療コンセンサスレポートの作成に着手する。NKEA Part Aのデータセットを用い、予後不良の各種サブグループにおける解析を、可能な限り海外研究グループと共同で実施する。治療コンセンサスレポートは東アジア以外の国々で診療の参考とされており、引き続き作成を試みる。また、Part Aで明らかにされた新世代治療の限界を打破する新たな治療法の臨床試験を東アジア共同で行うことを検討する。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
J Clin Exp Hematop
巻: 57 ページ: 98~108
10.3960/jslrt.17018
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000018002