研究課題
平成30年度では、平成26年度に開始した「新世代治療導入後の未治療節外性NK/T細胞リンパ腫(ENKL)における治療実態把握と予後予測モデル構築とを目的とした国内および東アジア多施設共同後方視的調査研究(NKEA)」を継続した。まず、平成29年度にNKEA Part Aデータセットを用い韓国Samsung Medical Centerの研究者と共同で実施した、新世代治療後に診断後2年以内の原病増悪(POD24)を経験した患者の診断時病態と予後に関する解析結果(NKEA Part B&C)を英文誌に報告した。並行して、上気道外発生例における新世代治療の適合性に関する解析結果を論文化し、英文誌に受理された。次に、限局期鼻ENKL患者における中枢神経系再発の頻度とリスク因子に関して、日本放射線腫瘍学研究機構(JROSG)悪性リンパ腫・血液腫瘍委員会の研究者と共同で検討を行った。その結果、限局期鼻ENKLに対し初回治療としてRT-DeVIC療法を行った場合の2年累積中枢神経系再発率は2%で、治療前歯肉浸潤がリスク因子であることを明らかにし、国際学会で報告した。以上により当初予定の解析をすべて終了したものの、NKEA Part Aデータセットの観察期間中央値は5.6年であり、二次性悪性腫瘍を含む遅発性有害事象の評価には短いことが指摘されていた。そこで、平成30年11月に生存と遅発性有害事象に関する追跡調査を呼びかけ、平成31年3月までに参加31施設中26施設のデータを更新した。これを用い、長期予後と遅発性有害事象に加え、診断治療間隔に関する解析を行った。平成31年度内に成果発表の予定である。年度内に東アジアの複数の研究者とENKLに関する情報交換を行い、新規治療法の臨床試験の実行可能性について検討した。複数の英文誌からENKLに関する総説の執筆依頼があり、執筆し公開された。
2: おおむね順調に進展している
NKEA Part Aデータセットを用いた解析を予定より早く終了し、追跡調査を実施できている。一方で治療コンセンサスレポートの作成には未着手である。ただし今年度に執筆した複数の英文総説では偏りなく国内外での治療アプローチを紹介しており、当初治療コンセンサスレポートの作成で意図した役割を果たしつつある。
NKEA Part Aの調査対象期間が2000-2013年でありすでに5年以上経過したこと、このような調査研究は欧米並みにENKLの発症頻度が低い日本での治療実態を把握するのに有効であることから、NKEA Part Aに続く国内多施設共同調査研究について着手する。NKEA Part Aデータベースを利用した海外研究グループとの共同研究について検討する。新世代治療の限界を打破する新たな治療法に関する東アジア共同の臨床試験についても検討を継続する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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