研究課題/領域番号 |
17K09927
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (50263976)
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研究分担者 |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00190439)
樋口 智紀 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (00448771)
橋田 裕美子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (00767999)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 / 悪性リンパ腫 / ウイルス / 感染症 / 微生物 |
研究実績の概要 |
悪性リンパ腫の発症に細菌やウイルスなどの微生物感染や慢性炎症が関与することが多い。WHO分類改定第4版(2017年)でも「Diffuse large B-cell lymphoma associated with chronic inflammation」というカテゴリーが設けられている。加えて、Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue (MALTリンパ腫)の多くも慢性炎症を基盤に発症することが知られている。しかしながら、これら慢性炎症関連リンパ腫の腫瘍化機構については未解決な点が多く残されている。胃MALTリンパ腫はHelicobacter pylori(ピロリ菌)感染よる慢性炎症と密接な関係にある。一方、Epstein-Barr virus(EBV)は胃上皮細胞に感染し、その持続感染が胃上皮細胞の癌化に関わる。胃MALTリンパ腫においてもピロリ菌に加えてEBVが直接的あるいは間接的に何らかの関与をしている可能性も想定される。しかしながら、これを立証するために適した胃MALTリンパ腫モデルは存在しない。そこで今回はEBV感染胃上皮細胞を用いてピロリ菌がEBV遺伝子発現に及ぼす影響について解析した。 EBV感染細胞に種々のピロリ菌株を暴露して培養を行い、48時間後にEBV遺伝子の発現量をリアルタイムPCRで測定した。共培養したピロリ菌株によっては、EBV Latent membrane protein (LMP)1およびLMP2Aの発現を有意に増加させるピロリ菌株があることが判明した。これは胃に存在するピロリ菌とEBVが作用し合う可能性を示唆する所見である。今後はこれら細菌とウイルスの共生が胃MALTリンパ腫の病態にどのような影響を及ぼすのかが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
あるピロリ菌株がEBVの癌蛋白とされるLMP1の発現を増強させる作用があることを見出した。これら微生物の協働が胃MALTリンパ腫の発症や病態修飾にどのような影響を及ぼすのかという問題提起になる所見である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、慢性炎症を基盤に発症するリンパ腫の発症機構、病態解明に向けて様々な節外性リンパ腫を対象にする。例えば消化管MALTリンパ腫、皮膚リンパ腫、膿胸関連リンパ腫において、ウイルスや細菌などの微生物の慢性感染がどのように係わり、それら感染に伴い発現される分子の同定などを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬を中心に物品費の支出を必要最低限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が発生した。 次年度も引き続き遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具、細胞培養関連試薬などの物品費を中心に予算を計上する。また必要に応じ備品購入に充てる。
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