研究課題/領域番号 |
17K09930
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
立津 央 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (00433029)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / SALL4 |
研究実績の概要 |
SALL4は、癌胎児タンパクであり、ES細胞の維持や分化に重要な転写因子である。ほとんどの体細胞で発現を認めないが、多くのがん細胞で発現上昇を認めることを報告してきた (Tatetsu et al. Gene. 2016 Jun 15;584(2):111-9.)。本研究の目的は、前癌状態とも考えられる骨髄異形成症候群においても、タンパクレベルでSALL4が高発現しているかを確認し、また、SALL4のRNA及びタンパクの発現パターンとスプライシングやエピジェネティック遺伝子異常との関係につい明らかにすることである。そして、将来的にSALL4が骨髄異形成症候群において、現在開発中の薬剤ターゲットとなるかを明らかにすることを最終目的としている。 まず、過去、当院で過去に診断を行った骨髄異形成症候群患者30例の骨髄標本を用いて、病理部と共同で組織アレイを作成を行った。続いて、そのアレイを用いて、SALL4の免疫染色を行い、SALL4のタンパクレベルでの発現確認を行った。結果、SALL4のタンパクレベルでの高発現例は、多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)/単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症 (RCUD)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)で増加していることを確認した。つまり、SALL4のRNAレベルだけでなく、タンパクレベルでの高発現例が骨髄異形成症候群で増加することが、示唆された。今後は、CyTOFを用いて、造血幹細胞からどの分化段階の細胞が主にSALL4を発現しているのかを解析する予定である。また、メカニズムに関しては、白血病細胞株また、骨髄異形成症候群由来の細胞株を用いて、検証を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去当院で過去に診断を行った骨髄異形成症候群患者30例の骨髄標本を用いて、病理部と共同で組織アレイを作成を行った。続いて、そのアレイを用いて、SALL4の免疫染色を行い、SALL4のタンパクレベルでの発現確認を行った。結果、SALL4のタンパクレベルでの高発現例は、正常で16%(1例/6例)であったのに対して、多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)/単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症 (RCUD)では42%8(6例/14例), 芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)も42%(3例/7例)と増加していることを確認した。また、3例は、経過をおって骨髄の再検査を行っているが、3例とも経過とともにSALL4の発現が上昇傾向にあった。これは、RNAレベルでの解析に矛盾しない結果であり、骨髄異形成症候群において、RNA、タンパクレベルでSALL4は上昇することが示唆された。現在、SALL4のバリアントであるSALL4AとBの発現の違いを明らかにするため、2種類のSALL4の抗体を用いて、免疫染色の再検査を行っており、バリアントでの発現の違いについて、CyTOFでの解析を含めて、検討中であるが、概ね順調に経過していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
免疫染色を行うことにより、骨髄異形成症候群の患者骨髄細胞のタンパクレベルでのSALL4の発現上昇が確認できた。今後は、CyTOFを用いて、どの分化段階の細胞が主にSALL4を発現しているのかを解析予定である。抗体のパネルはすでに作成し、現在、SALL4の抗体のラベルを行っている段階である。具体的には、26種類の抗体を用いて、SALL4の発現を造血幹細胞からの分化段階で明らかにし、また、SALL4のバリアントであるSALL4AとBの違いを検出するため、2種類のSALL4抗体を用いる。どの分化段階でSALL4発現上昇しているかが、明らかになれば、次に、なぜ、発現上昇があるのかを明らかにするために、細胞をソートして、細胞の性質をRNA、タンパクレベル、遺伝子異常の解析も合わせて解析を行う。また、メカニズムに関しては、白血病細胞株また、骨髄異形成症候群由来の細胞株を用いて、検証を行う。最終目的は、将来的にSALL4が骨髄異形成症候群において、現在開発中の薬剤ターゲットとなるかを明らかにすることであり、そこに向けて、準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度には、まず、骨髄異形成症候群30例の患者に置いて、SALL4のタンパクレベルので発現を確認する必要があった。平成30年度は、SALL4高発現細胞を同定するために、さらなる患者検体の解析をCyTOFを用いて行う予定であり、その際に、繰り越した研究費が必要になる。
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