成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)細胞の遺伝子異常と臨床症状・治療経過のデータベース化を行った(190例)。そのうちの47例についてエクソーム解析を行った。検出された変異は既報とほぼ同程度のプロファイルを認めていたが、これまで報告されていないRLTPRの反復性遺伝子変異を検出した。同変異が機能獲得型変異であることをin vitroで確認した(NFkBリポーターアッセイ等)。変異RLTPRがNFkB活性化に中心的な役割を果たすCARD11と直接結合すること、またRLTPRがHTLV-1由来蛋白であるTaxと直接相互作用があることを観察できた。皮膚リンパ腫で当初同定されたRLTPR Q575E変異を有する症例の臨床像についても検討したが、皮膚指向性は明らかではなかった。皮膚型ATLにおいてより蓄積しているかの検討が必要である。 CARD11機能獲得型変異を有するマウスを作出し、表現形質解析を行った。最長3年間の観察期間で悪性リンパ腫は起こさなかった。脾臓由来細胞を用いたフローサイトメトリーでの検討では、機能獲得型CARD11変異を有するマウスにおいて活性化T細胞分画の増加、制御性T細胞の増加、成熟B細胞の増加を認めた。本研究の主目的であるCARD11のSH3/GUKドメインの会合阻害剤の探索については、作成した細胞基盤では候補コンパウンドを同定できなかった。CARD11のSH3/GUKドメインに対する結合小分子の同定のために、CARD11の結晶構造解析を創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)構造解析領域の支援のもと進めている。
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