研究課題/領域番号 |
17K09933
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
石塚 賢治 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10441742)
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研究分担者 |
吉満 誠 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (70404530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 成人T細胞白血病・リンパ腫 / Bcl-2関連蛋白 |
研究実績の概要 |
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は未だに予後不良な疾患であり、かつ今後は患者の高齢化が顕著となることから有害事象のより少ない治療手段の開発が必要である。 選択的Bcl-2阻害薬Venetoclaxは近い将来日常臨床で使用可能と見込まれるBcl-2関連蛋白を標的とする治療薬である。慢性リンパ性白血病や多発性骨髄腫患者に対する有用性が示されているものの、Venetoclaxが作用しないBcl-XLやMcl-1の発現とアポトーシス誘導能の関連については報告がない。 本研究では、まず患者由来ATL末梢血細胞のBcl-2関連蛋白(Bcl-2, Bcl-XL, Mcl-1)の発現とVenetoclaxによって誘導されるアポトーシスの関係を調べた。その結果、患者由来ATL細胞は種々の程度にBcl-2、Bcl-XL、Mcl-1を発現し、Mcl-1とBcl-XLの高発現、Bcl-2の低発現はVenetoclaxによるアポトーシス誘導を負に制御することが明らかになった。 このことは、Venetoclax単剤では全てATL患者の腫瘍細胞に対しては十分な効果が得られない可能性があるものの、Mcl-1とBcl-XLの発現の低い約30%のATL患者には有用であることを示唆している。一方、Mcl-1とBcl-XLを高発現するATL細胞において、現在ATL治療に使用されている細胞傷害性抗がん剤によって誘導されるアポトーシスをVenetoclaxが増強したことから、Bcl-2関連蛋白の発現様式の違いによる個別化治療の実施や従来から使用されてきた抗がん剤の耐性克服の可能性も示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を行うためのハードウェアに特に問題もなく、大きな問題点はない。
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今後の研究の推進方策 |
Bcl-2関連蛋白を標的とするATL治療を考えた場合、Bcl-2高発現でMcl-1とBcl-XLが低発現ならば、Venetoclaxの有効性が強く示唆されることになる。当科で開発した患者末梢血ATL細胞をnon-obese diabetic/severe combined immunodeficiency/Jak3-null mice (NOJ mice)に移植するマウスモデルを使用し、Venetoclaxの有効性をin vivoで検討する。一方で、約70%のATL患者ではBcl-2に加え、Mcl-1あるいはBcl-XLを同時に発現している。そのような症例に対しては、それらの抗アポトーシスタンパクを同時に抑制する方策を考える必要があるが、近年CDK9阻害薬VoruciclibがMcl-1発現を抑制することが報告されている(Sci Rep. 2017 Dec 21;7(1):18007.)。そこでMcl-1陽性のATL細胞株、患者末梢血ATL細胞においてVoruciclibで誘導されるアポトーシスを調べ、さらにVoruciclibの併用によってVenetoclaxによるアポトーシス誘導耐性を克服できるかどうかを調べ、期待される効果が得られたならば、上述のマウスモデルでこの2剤の併用による有用性を調べる。 Venetoclaxは既に慢性リンパ性白血病に対し米国FDAで承認され、本邦でも開発治験が実施中であることから、この前臨床試験でVenetoclaxのATLに対する有用性が証明された場合には、腫瘍細胞がBcl-2陽性、Mcl-1とBcl-XL陰性のATL患者に対しての治療開発の実施を製薬メーカーにリクエストする。
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