研究課題
多発性骨髄腫におけるToll様受容体(TLR)CD180の機能解明を進めた。まず、骨髄腫患者に感染が起きる前後の病態の変化を、骨髄腫細胞が産生するMタンパクの血清中の値を指標として後方視的に解析した。その結果、全36症例中、細菌感染に伴う炎症マーカであるCRP値の上昇が見られた10例のうち8例でMタンパク値が継続的に上昇、すなわち病態が悪化する傾向が明らかになった。続いて、多発性骨髄腫におけるTLRの発現様式をOncomineデータベース(https://www.oncomine.org/)により解析したところ、TLRの中ではCD180のみが正常形質細胞に比べて有意に強発現していた。CD180はグラム陰性菌由来のリポ多糖(LPS)を認識するTLR4に高い相同性を持ち、その下流でNF-κBやJNK、ERKキナーゼ経路の活性化を介して増殖亢進や抗アポトーシスに働く。従って、骨髄腫患者で見られた細菌感染に伴う病態の悪化には、TLR4やCD180を介した機序の存在が示唆される。そこで、骨髄腫患者由来の細胞や骨髄腫細胞株のTLR4とCD180発現を解析した。すると、CD180発現がほとんどの骨髄腫細胞と細胞株で検出されたほか、LPS刺激がCD180発現に応じて骨髄腫細胞株の増殖を有意に亢進させること、その下流でERKやJNKキナーゼの活性亢進が誘導されることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度内に設定した研究目標を達成した。
平成30年度内に、CD180の転写調節機構の解明や発現抑制に働く低分子阻害剤の同定とマウスを用いた治療モデルにより、進展抑制に有効な治療法の開発を進める。最終年度である平成31年度内には、骨髄腫患者のCRP値上昇時のMタンパク値変化の後方視的解析を症例数を増やして行い、両者の相関性を解析すると共に、検体が入手できる症例についてはCD180発現レベルを解析し、感染の有無やCD180発現レベルと予後との関連についても解析を進める。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.jichi.ac.jp/laboratory/molecula/stem/index.html