研究課題
多発性骨髄腫におけるToll様受容体(TLR)CD180の機能解明を進めた。多発性骨髄腫におけるCD180の発現様式をデータベース により解析したところ、1) 正常形質細胞に比べて有意に強発現すること、2) 骨髄腫細胞の中でも幹細胞の含まれるCD138陰性細胞で発現が高いこと、3) 骨髄から採取すると時間の経過に伴い発現が低下することが明らかになった。ここから、CD180は骨髄微小環境にある骨髄腫幹細胞で発現が亢進しており、LPS刺激は幹細胞を刺激して増殖の亢進に働くことが示唆された。骨髄腫細胞をストローマ細胞の共存の有無でマウス皮下に移植すると、ストローマ細胞の共存時のみLPS投与による増殖亢進が見られた。ストローマ細胞の共存下では骨髄腫細胞のCD180発現が亢進しており、LPSに対する感受性が高まったと考えられる。一方、CD180発現の抑制に働く低分子阻害剤には、LPSを介した増殖刺激を阻害する作用が示唆される。続いて、CD180の転写制御機構の解明を進めた。その結果、CD180が転写因子Ikarosにより転写活性化されていること、Ikaros分解を介して抗骨髄腫作用を示すサリドマイド誘導体レナリドマイドがCD180発現を抑制し、LPSによる増殖刺激を阻害する作用が明らかになった。LPS投与前にレナリドマイドを投与したマウス移植モデルでは、骨髄腫細胞のCD180発現が見られず、増殖亢進作用も見られなかった。また、骨髄腫患者の後方視的解析においても、レナリドマイド投与中の症例では細菌感染に伴う病態悪化が見られなかった。ここから、レナリドマイドには骨髄腫細胞のCD180の発現抑制を介して感染に伴う病状の悪化を予防する働きが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度内に設定した研究目標を達成した。
最終年度である平成31年度内には、骨髄腫患者のCRP値上昇時のMタンパク値変化の後方視的解析を症例数を増やして行い、両者の相関性を解析すると共に、 検体が入手できる症例についてはCD180発現レベルを解析し、感染の有無やCD180発現レベルと予後との関連についても解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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