研究課題/領域番号 |
17K09938
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
古川 雄祐 自治医科大学, 医学部, 教授 (00199431)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子標的療法 / LSD1阻害剤 / 急性リンパ性白血病 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
これまで前臨床研究に頻用され、commercialに入手可能であるtranylcypromine・RN-1・ OG-L002の造血器腫瘍に対する殺細胞効果を、細胞株を用いてスクリーニングしたところ、急性骨髄性白血病や多発性骨髄腫に比べT-ALLに対して高い効果を有することがわかった。しかしながらIC50は5~10 μMであり、臨床応用レベルに達していなかった。そこでtranylcypromineを改変してLSD1阻害活性と特異性を増強したS2101およびその誘導体4種類を用いて同様の実験を行った。その結果、S2116とS2157の2つがT-ALLに対し臨床応用可能なレベルのIC50(1~5μM)を有することが確認できた(特許申請済み)。 NOD-SCIDマウスの尾静脈からluciferase遺伝子を組み込んだT-ALL細胞株MOLT4-Lucを移植し、体内動態を非観血的にモニターすることが可能なマウスT-ALLモデルを作製した。T-ALLの生着を確認した後(Day 0)、S2116および S2157を50mg/kgで週2回腹腔内に投与したところ、腫瘍の増殖が抑制され、生存率も有意に改善した。Day 21にマウスの脳を摘出し、病理組織検査を行ったところ、S2157投与群においてCNSに浸潤した腫瘍細胞がアポトーシスを起こしていることが確認された。 これら新規LSD1阻害剤の作用機序を解明するため、マイクロアレイ解析とChIP-Seqを施行し、NOTCH3とTAL1の転写抑制がT-ALLの増殖抑制およびアポトーシス誘導に関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究で同定した新規LSD1阻害剤S2157は、T-ALLに対して臨床応用可能なレベルの力価を有し、今まで治療が困難とされてきたCNS病変に対しても有効で ある可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究で同定した新規LSD1阻害剤S2157について、ラットおよび非齧歯類動物(イヌ・サル)を用いた安全性試験と薬物動態試験を実施して非臨床POCを取得し、GMP基準での化合物の製造に関する具体的方針を固めて、近い将来に臨床治験へ展開することが可能なレベルの基礎データを取得する。
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