ボルテゾミブや免疫調節薬などの分子標的薬の登場によって多発性骨髄腫の治療成績は向上しているが依然根治は不可能であり、再発を繰り返していずれ難治性となるため新規分子標的薬の効かない再発/難治性多発性骨髄腫に対する新たな治療法の開発は緊急課題となっている。そこで我々はこのような難治性多発性骨髄腫治療における新たな標的として、DNA修復に重要なはたらきを担っている細胞周期チェックポイント蛋白であるWEE1に着目して本研究を行った。まず我々はWEE1特異的阻害薬であるAZD1775を用いて多発性骨髄腫細胞株および臨床検体に対する作用を検討しAZD1775が時間および用量依存的に骨髄腫細胞のアポトーシスを強力に誘導することを見出し、つぎにAZD1775がボルテゾミブ耐性細胞株に対してもアポトーシスを誘導することを明らかにした。WEE1阻害による多発性骨髄腫アポトーシス誘導の機序を検討したところ、WEE1の阻害がDNA損傷を有する細胞の細胞回転が早まり異常な細胞分裂を誘導するのと同時にWEE1の阻害自体がDNAの損傷を増幅することによってより強力なアポートシス誘導作用を発揮することを明らかにした。他の治療薬との併用効果についても検討したが、その中でもAZD1775とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬の併用はそれぞれ単剤より強力にアポトーシスを誘導することを示した。これらの研究によってWEE1阻害剤が難治性多発性骨髄腫の有効な治療薬となりうること、WEE1阻害剤とHDAC阻害薬がより強力な抗骨髄腫作用を有し有効な治療法となりうることが明らかになった。
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