研究課題/領域番号 |
17K09941
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
服部 浩一 順天堂大学, 大学院 医学(系)研究科, 特任先任准教授 (10360116)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 生体分子 / シグナル伝達 / 免疫制御学 / 血管内皮 / 血液線維素溶解系 |
研究実績の概要 |
本研究は、白血病・リンパ腫を中心とした腫瘍性疾患、また炎症性疾患病態を中心に、生体のストレス応答機構を制御する血管内皮を中心とした微小環境―血管ニッチの形成機序、機能、そして疾患病態に応じた疾患特異性―疾患特異的ニッチの構成解明等を主な目的としている。今年度までの研究で、研究代表者らは、腫瘍性疾患、炎症性疾患の動物モデルを確立し、組織型プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)等の血液線維素溶解系(線溶系)因子や、一部のマトリックスメタロプロテアーゼを含むプロテアーゼ、またepidermal growth factor like-domain 7(Egfl7)等の血管新生因子、成長因子によって構成される血管内皮細胞由来のアンジオクライン因子群が、血管ニッチを構成する免疫系細胞、あるいは間葉系細胞から産生される各種サイトカイン、増殖因子と密接に相互作用を有することにより、血管新生、そして腫瘍細胞増殖を制御していることを示唆した。今年度、代表者らは、胸腺中の血管内皮から分泌されるEgfl7が、Flt3/Flt3 ligandシグナルの活性化を通じて、T細胞の成熟・分化、増殖を制御し、炎症惹起に伴う免疫系細胞の動態に直接的に関与していることを明らかにした。加えて代表者らは、前出の疾患動物モデルの解析により、アンジオクライン因子群による腫瘍細胞の増殖が、tPAとその受容体の一つであるlow density lipoprotein related protein-1(LRP1)シグナルにより上方制御されていることを論文報告した。 これらの研究成果は、いずれも血管ニッチの構成分子が、新しい免疫制御、抗腫瘍療法の分子標的、あるいは組織再生療法の開発基盤となることを示唆しており、代表者らは、現在、臨床応用に向けた患者検体の解析と各科と連携したトランスレーショナルリサーチの準備に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの進捗状況として、研究代表者らは、今年度までに、本研究計画全体の基礎となる、血液腫瘍性疾患と炎症性疾患の双方について疾患動物モデルを作製、確立し、さらにこれらの病態形成に関与する、主な血管ニッチの構成、アンジオクライン分子、そして一部はこれに含まれる成長因子やサイトカイン群、そして血管内皮細胞、造血系細胞、間葉系細胞の動態と相互作用を明らかにすることが出来た。また、代表者らは、これらに加え、各種疾患病態に対応した、病変中の血管ニッチの構成変化と異常を明らかにしたこと、そして血管内皮細胞からの分泌物質動態と疾患病勢、病態との関連性を示したことは、本研究の仮説の検証のみならず、来年度からの臓器と腫瘍組織のインタークラインシステムの解明という研究計画の遂行上についても、重要な研究成果が挙がったものと考えている。加えて、白血病・悪性リンパ腫を含む腫瘍性疾患、またこれらが併発する凝固・線溶系の異常、マクロファージ活性化症候群、腸管癒着等について、抗血管ニッチ療法をはじめとする、血管ニッチ制御を目的とした、新規疾患治療開発の基盤形成が着実に進んだこと、さらにこれらに併行して、臨床各科との連携により臨床検体の集積と解析が進んでいることから、計画以上の進展があったと捉えても、差し支えない状況であると考えている。 また、これらについて、今年度までに得られた個々の実験結果、腫瘍性疾患そして炎症性疾患病態における、血管内皮細胞から分泌されるアンジオクライン分子群と、免疫系細胞から産生されるサイトカイン群との相互作用、またこれらを通じた血管内皮系、間葉系、免疫系細胞群の動態解明に関する研究成果は、研究計画の段階で勘案された、血管ニッチ構成分子による疾患制御機構の存在を支持する、当初の仮説に沿った内容であり、来年度以降の研究展開についても、明確な修正点は特に見当たらないものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究成果で、確立された自然発症型、あるいは薬剤誘導型の血液腫瘍性疾患動物モデル、炎症性疾患モデルに対し、血管内皮特異的に、数種の線溶系因子やマトリックスメタロプロテアーゼ、血管新生因子等の各種アンジオクライン分子の発現を抑制したマウスと対照群の作製を進め、これらのマウスより末梢血液、組織を採取し、細胞数と構成、各種コロニー形成細胞数の算定に加え、血管内皮、 造血系、間葉系細胞をソーティングし、分離細胞培養と細胞表面マーカー解析を進めると同時に血漿中のアンジオクライン分子濃度あるいは活性を測定、検出する。また臓器については病理切片を作製し、免疫特殊染色、in situ hybridization等を施行し、疾患病変、臓器組織中の血管ニッチの構成、性状解析に加えて、疾患病態における血管ニッチの機能解明、そして疾患特異的血管ニッチの形成機構、性状解析、機能解明を進め、これらの実験結果に加え、抗血管ニッチ療法や、血管ニッチを対象とした治療の有用性についても、論文、学会での情報発信に逐次努める。 また連携研究者らとも協力して、ヒト白血病・リンパ腫、炎症性疾患における血管ニッチの機能解明を推進していく。血管ニッチを構成するヒト由来血管内皮細胞、間葉・ストローマ系細胞及び単球・マクロファージ細胞株の培養実験については、現在進行中であり、一定の実験データも採取しており、学会発表を始めており、論文発表も準備中である。血液疾患・免疫疾患患者と正常対照群の検体採取と患者情報として、重症度、病期、治療の有無等について記録したデータの解析を始めている。患者血漿中のアンジオクライン分子群の濃度あるいは活性を測定、検出し、また採取細胞の分離培養実験も並行して進める。加えて、臨床検体を使用した実験については、今後も連携研究者らと協議を重ね、可能な限り多数の症例集積を目指すものとする。
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